ひのきみ通信 第35号

1999年9月10日

 「この情勢が長く続くだろうか?私自身は、それ程長く続くとは考えない。…これは鼓舞にならないことだが、我々は日本歴史を調べていくと、慰めを見出す。日本の歴史は、過去における発展が、常に革命によって行われてきたことを示している。」
(片山 潜「日本の労働運動」より)

目次

木更津で「日の丸・君が代」法制化に反対する緊急集会 佐々木悠二(袖ヶ浦高校分会)
こんな素敵な入学式も「普通」です 編集部
この夏、父からのメッセージ 池上 澄一郎(船橋旭高校分会)
編集後記 stylo rouge
お知らせ

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緊急集会

木更津で「日の丸・君が代」法制化に反対する緊急集会

佐々木悠二(袖ヶ浦高校分会)

 7月に入り、君津支部の組合員の中からは、「このまま『日の丸・君が代』法案が通ってしまうのか、まずいよ、何か意思表示する必要があるんじゃない?」という声が囁かれるようになった。7月16日に本部からの提起で行った「12カ月延伸・教育財政間題」のビラ撒き・駅頭宣伝を機会に、「日の丸・君が代」問題でも、君津支部で独自集会と宣伝行動をやろう」という気運が一気に高まった。
 その日の夜に行われた「平和・人権・教育と文化を考える会」の幹事会で、中村会長や事務局からも「会として、なんらかの行動をしたい。」と提起があり、幹事一同「やろう」ということになった。時はみんなの都合で7月31日、「日の丸・君が代」問題についての講演・集会と、宣伝カーを用意して木更津駅頭でのビラ撒き・宣伝行動をやろう、と言うことに決まった。講師は高教組の本間委員長にお願いすることになった。
 早速事務局の栗原木更津高校中央委員が集会案内ビラを作り、7月19日の「県民集会」で報告しながらビラを配った。
 当日は、短い準備期間で宣伝もほとんどできないなか、52名の参加で集会がもたれた。
 本間委員長は、日の丸や君が代の本質から歴史、政府・文部省のねらいから私たちの闘い方までを講演してくれた。このあと、質疑・討論が交わされた。注目すべきは、高教組が呼びかけた19日の「県民集会」に参加した若いご夫婦がわざわざ木更津集会まで来てくれたことである(この御夫婦は、8月5日の国会前のデモ行進にもお二人で参加されていた)。また、参加者のなかから、討論のときに、「今の学校教育は、なにかおかしいんじゃないか」という指摘があった。参加者の中でも教員が3分の1ほど居たのだが、きっちり答えられたのか、自信がない。私は自分の今の学校の生徒の実態から「指示をされないと自分では何も行動できないような、そんな子どもをつくってはいないか。学校の職員だけではもう対処できない」という発言をしたが、会場の女性から「今の子どもちたちはすてたもんじゃない。広島に連れていったらちゃんとまともな反応や行動をした。」と、逆に励まされてしまった。日の君対策委員会のメンバーも参加していただいて、皆さんが全県・全国の様子を話して、励ます発言をしてくれた。
 集会が終わってから30分後、木更津駅まで移動して宣伝カーとハンドマイクで演説つきのビラ撒き行動を行った。もちろん君津支部のメンバーが独自に作成したビラで。いつものことながら高校生の受取がいい。高教組の各支部に訴えたい、自分の学校の生徒が乗り降りする駅でぜひ宣伝行動をおこなうべきだと。ふだん、学校で、教壇で言っていることを、この先生は実践しているんだ、と、生徒の教職員を見る目が違ってくる。
 ビラ撒きのあと、講師の本間委員長を囲んでの懇親会も持たれた。その後、「日の丸・君が代」法案は残念ながら国会を通過してしまったが、ある組合員の声を紹介して今後の見通しに代えたい。
 「まさか『日の丸・君が代』の問題で、こんなに日本中や先生方の間で議論になるとは思わなかった。」

講演 街頭宣伝

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こんな素敵な入学式も「普通」です

編集部

 千葉県にもいろいろな高校があります。卒業式・入学式にも各高校いろいろな伝統ややり方があると思います。ここ10年で「伝統」を破壊する校長さんも目立ちます。
 ここに示すのは、ある高等学校の生徒会から校長への「1999年度入学式要望書」です。

○○○○高等学校
 ○○ ○○○校長 様
1998年12月21日           
千葉県立○○○○高等学校生徒会
会長 ○○ ○○○

1999年度入学式要望書

 私たちは、入学式の意義を次のように考え、以下のことを要望する。

[意 義]
  • 入学を祝う
  • わが校の雰囲気を知ってもらう
  • ○○高生の自覚をもってもらう
[式次第]
開式の言葉 入学許可 校長の話し
PTA会長の言葉 来賓紹介 祝電紹介
在校生プログラム 校歌紹介 新入生の言葉
10 閉式の言葉
[補 足]
  • 「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱は行わない。
    生徒の意見を集約し、議論を重ねた結果、入学式には無関係であり、また、「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱を強制することに反対だという結論に達した。
  • 意義は、入学許可候補者説明会において新入生に伝える。
  • 入退場の伴奏は、吹奏楽部に依頼する。
  • 来賓、祝電の紹介は本校に関係のある人の氏名のみで、祝電の内容は掲示板に掲示する。
  • 在校生によるプログラムは、有志による「起草委員会」を設置し、起草を行う。
  • 新入生の言葉は、有志による「起草委員会」を設置し、起草を行う。
  • 保護者の挨拶を行う場合は、式次第以外の場で行う。
  • 校歌は在校生有志で行う。
  • 在校生の入学式参加は全員とする。
  • 入学式の形態は、「対面式」とする。
会場図

 このような入学式が、この4月につつがなく行われました。何ら問題は起きません。入学式のどこに「日の丸」や「君が代」が必要だというのでしょうか。無くて困るものではなく、持ち込もうとすれぱ混乱する厄介な代物が「日の丸・君が代」です。その「厄介物」を学校に強制して何の益があるというのでしょうか。
 さて、この学校の入学式に出席した新入生、保護者の感想を聞いてみましょう。

(以上、新入生)

 その高校の教育への姿勢がこれだけはっきりと生徒や保護者に納得してもらえる入学式はそうはないと思います。このような素晴らしい「式」に「日の丸・君が代」まして、「国旗・国歌」、「一同敬礼・一同斉唱」が必要無いことは明らかです。私もここ10年で4人の校長さんに「日の丸・君が代を式でやる理由を教えてほい」と聞きましたが、4人の内で答えてくれたのは1人だけでした。しかも、その答えとは「学習指導要領に定めてあるから、以上!」というものです。校長先生でさえその必要性を語ることができない。それが、「式」の「日の丸・君が代」です。

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この夏、父からのメッセージ

池上 澄一郎(船橋旭高校分会)

 私には77歳になる父がいる。85年に戦争の体験をつづった『マンダラガンの夜嵐』という本を自費出版した(後に彩流社より『南十字星は忘れない』のタイトルで再版)。その本には、捕虜時代包帯用の三角巾に赤チンで日の丸を描き、固まった墨汁で寄せ書きをして、米兵に売った(缶詰と交換)などというエピソードがある。
 この夏、両親のところを訪れた時の父の話は、そんなエピソードをふまえて「日の丸なんてその程度のものだから、首をかけるほどのものではないよ」と始まった。しかし、父も「国旗・国歌法」成立に至る過程に過去の記憶を蘇らせていて、「なぜ今、日の丸・君が代が国旗・国歌なのか。国際的に日の丸・君が代がどう見られているのか、政治家の不勉強さにあきれる。国旗・国歌を決めるというのなら国民から国旗・国歌を募り(政府が懸賞金を出してもいい)国民投票で決めるべきだ。そもそも、定着しているというけれど、例えば各家庭に必ず日の丸があって祝日には掲げる、そんな状態ではじめて定着しているといえるのだ」と話を続けた。
 そして「もうこれでフィリピンには行けないな」と呟いた。父は以前より、「定年になったらフィリピンに行ってみようか」などと言いながら結局自らの“主戦場”を再び訪れることはなかった。そこは過去の思い出の地でもあり行ってみたい気持ちもあるものの、償いもできないほどの罪をおかした地であるという思いがそれを上回っていたのだろう。だが心の底にはまだ、行ってみたい気持ちを残していた。しかし今回の「国旗・国歌法」成立によって、「日の丸・君が代が国旗・国歌の国からは、(フィリピンには)行けない。少なくとも俺は行けない」ことになってしまった。
 ここで上掲本より少し長くなるが引用して、ここまでの文章の“行間”を埋めてみたい。この部分は新聞の投書欄に出すつもりで書いたものだそうだ。 

 三年前のことである、戦友会から一通の案内状が舞込んだ。それは、石川県小松市がフィリッピン・ネグロス島のパコロド市との間に『姉妹都市』の契を結んだことを記念して、彼の地に旧帝国陸海軍人の戦歿者慰霊碑を建立するので、応分の寄付をしてくれというものであった。
 小松市長というのはどんな考えの持主かは知らないが、その無神経に呆れると同時に、これと肩を並べて名前を連ねている元高級将校連中の考え方にも疑問を持った。
 肉親を失った遺族が、供養のために、故人終焉の地に墓標を建てたいという気持ちは、痛いほどによく解る。
 だが、フィリッピンという国は、日米の戦争に巻込まれて、国土は荒らされ、罪もない非戦闘員であった住民が多く殺されている。
 日本軍は土足で他人の家に上がり込み、物は掠奪するわ、住民に手はかけるわで、贖罪も遠く及ばない程の迷惑をかけているわけである。
 私は早速、戦友会の事務所に電話をかけ、「この計画は右のような意味から中止したらどうか? 姉妹都市の記念に贈るならば、たとえ保育園や幼稚園でもよいから、住民に少しでも役立つものを贈り、そしてどこかの片隅に謝罪の言葉を記したプレートを入れてはどうか?それならば喜んで寄付に応じたい」と申し入れたが、受入れてはもらえなかった。
 理由としては、パコロドの市長以下の役人をはじめ、有力者のほとんどが乗り気で、既に敷地も決まり、工事会社なども手当てずみで、今さら変更などできないとのことであった。
 戦争は忌むべきものとして、記憶を風化させてはならないという声が高まっているが、私はこのことで深く考えさせられてしまった。
 それは、この慰霊碑建立が容易に受入れられた背景には「カネ」が大きくモノを言っていたのであった。六百万円近い工事費と、除幕の後にやって来る巡拝団の落すであろう観光収入とを素早く計算したからである。
 今でも貧しいフィリッピンに、金さえ払えば相手が喜ぶといった思いやりのない日本人の心と、パコロド市の体制側とがうまく結びついたのであろうか。
 太平洋戦争で傷ついた一般市民のおもいは必ずしもそうではあるまい。捕虜となって運ばれる途中、比島の各地で聞いた「パタイ、パタイ(殺してやる)」の声を、私は忘れることができない。
 為政者の思惑と大衆の希いとは、いつも悲しいところですれ違っていて、要人の懐はますます太り、民衆の哀しみは深まるばかりである。
 これが政治の本来の姿なのかも知れないが。
     ──
(下線部は原文では傍点)

 そして、こんな話の終わりに父は「日本という国は、ほんとうに変わらない国だ。このままではまた同じことを繰り返すだろう。自衛隊というのは非常に金のかかる軍隊だから、政府は早晩徴兵制を提案してくるだろう。その時に若者たちがどのくらい反対できるかにこの国の将来がかかっている。そこで反対しきれないようなら、もう日本はだめだ」という意味のことを言った。私はそこに「おまえは教員なんだから、そうならないように頑張らなくてはいけないぞ」という父のメッセージを読みとった。

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編集後記

 今回は、○○高校の入学式の記事を載せました。新学習指導要領では、「主体的に生きる」ことが強調され、新しく登場する「総合的な学習の時間」でも、「各学校の創意工夫」が強調されています。しかし、この○○高校のような取り組みは評価されるでしょうか。所沢高校の例を見てもわかるように、文部省はこのような取り組みをつぶしにかかるのです。いかに、彼等の言っていることがデタラメかということです。しかし、我々は、このような生徒たちの自主的な活動を守り、発展させるために闘いたいと思います。千葉県にもある民主教育の火を消すまい!
stylo rouge

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お知らせ

9月10日(金) 18:00〜 「日の丸・君が代」法制化の持つ意味 講演:小森陽一(東大教授) 千葉県教育会館203
9月11日(土) 13:30〜 「抑止と対話」を越えて 東北アジアの平和に向けて市民ができること
 浅井基文・山中あき子・外務省担当課(交渉中)他
東京大学農学部1号館
 (地下鉄南北線東大前)
9月11日(土) 11:00〜 現教研まつど・母親と教師の語る会 松戸市民会館
9月11日(土)
 〜12日(日)
10:00〜
〜12:00
第27回全国平和教育シンポジウム 広島市立幟町中学校
9月13日(月) 10:00〜 学校の調査報告義務を問う訴訟 東京地裁721
9月13日(月) 15:00〜 文京七中早川さん職業病解雇撤回裁判 東京地裁701
9月13日(月) 15:00〜 「少年法改正」に反対する団体・個人の活動交流ネットワーク 東京弁護士会館5F 502
9月14日(火) 15:00〜 「豊かな海づくり」住民訴訟 東京高裁824
9月16日(木) 14:30〜 「皇太子結婚祝賀事業」住民訴訟 東京地裁611
9月18日(土) 13:30〜 731部隊・南京大虐殺・無差別爆撃事件訴訟
 判決直前証言集会 (李秀英さん、敬蘭芝さん証言)
四谷区民ホール
 (丸の内線新宿御苑前5分)
9月18日(土) 17:30〜 「天皇制度論」と女性天皇 文京区民センター
9月18日(土) 13:30〜 軍隊のいらない安全保障 ゼロ成長で豊かに生きる 明治学院大学白金校舎
 (地下鉄高輪台5分)
9月21日(火) 14:30〜 埼玉県所沢高校不当処分人事委員会審理 埼玉共済会館6F
9月24日(金) 19:30〜 名護ヘリポートに反対する会例会 SCATセミナールーム(神楽坂メゾン)
 (地下鉄神楽坂5分)
9月25日(土) 18:30〜 司法制度、裁判所、裁判官、検事による被害者の会(準) 神田パンセ503
9月25日(土)
 〜26日(日)
15:00〜
〜12:00
「日の丸・君が代」対策委員会バトルトーク合宿(参加費\6000)
 申込:浦安高校・渡部、袖ヶ浦高校・佐々木、千葉工業・佐久間
七里川温泉(君津市黄和田畑)
9月26日(日) 12:30〜 アジアの平和を求めるシンポジウム
 新崎盛暉、富山栄子、前田朗、横堀正一
シニアワーク東京(飯田橋7分)
9月27日(月) 11:30〜 即位礼・大嘗祭違憲訴訟神奈川住民訴訟判決 横浜地裁仮庁舎101(石川町4分)
9月28日(火) 16:30〜 田畑さん東京都(教員)嘱託拒否違憲訴訟 東京地裁710
9月30日(木) 16:30〜 桜井さん鷹番小の体罰事件・元校長の尋問 東京地裁610
9月30日(木) 16:30〜 上岡さん「日の丸」処分訴訟 東京地裁710
10月2日(土) 13:30〜 シンポジウム・教科書裁判が切り拓いたもの
 高嶋伸欣、大森典子、梅原利夫
和光大学J棟301
10月4日(月) 18:00〜 第49回命どぅ宝ネットワーク署名提出行動 衆議院議員面会所集合
10月5日(火) 13:00〜 名護市民投票裁判第8回公判 (傍聴ツアーあり)
 問合:名護市民原告団を支える会 03-3366-4650
那覇地裁前集合
10月8日(金) 13:20〜 松本教育裁判21回公判最終弁論 千葉地裁松戸支部
10月9日(土) 13:00〜 忘れられた戦争─アフガニスタン難民キャンプ報告 東京ウィメンズプラザ
10月16日(土)
 〜17日(日)
13:00〜
〜12:30
アムネスティ99年全国研修会
 申込:Fax03-3232-0775
国立オリンピック記念青少年
 総合センター
10月17日(日) 14:00〜 エスニックコンサート99「はさみ踊り」ペルーの先住民族を迎えて 上野水上音楽堂
10月18日(月) 15:00〜 文京七中早川さん職業病解雇撤回裁判 東京地裁701
10月26日(火)
 〜29日(金)
  船橋郵便局桜沢さん残業拒否分限免職取消人事院公平審査会  

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