元祖・世紀末を生き抜く言葉[4] (上野千鶴子『女という快楽』より) |
東京高裁に移った高嶋教科書訴訟 | 杉浦和義(船橋法典高校分会) |
「日の丸」処分・福岡高校裁判 「人事委員会委員」を尋問 | 近正美(佐倉高校分会) |
所沢高校竹永教諭不当戒告処分「公開口頭審理」を傍聴して 埼玉県立高等学校への信用を失わせたのは内田校長 繋ぎとめたのは竹永先生だ! |
佐久間美弥子(中央執行委員・検見川高校分会) |
これだけやっても完全実施は「24県」 | 近正美(佐倉高校分会) |
編集後記 | 心優しき叛逆者 |
お知らせ |
【教科書観の見直しを迫る裁判に】
10月26日午後1時半、東京高裁101号法廷で、80人近い傍聴者を集めて控訴審が始まった。第1回目は、控訴の趣旨を書面で提出されたものを補足する形で、原告側から3人が立って陳述をした。
高嶋さんは、「日本国憲法を生徒に教えてきた者として、教育の自由を奪う検定と争う責務がある。一審で勝訴できなかった残りのテーマについてその正当性を主張したい」、また、「原判決ではふれられなかった教科書観(覚えるのではなく、考えるための教科書)についても主張したい」などと述べた。
鈴木弁護士は、「家永裁判での教科書問題の枠組みに押し込まずに、違うものとして判断してほしい。また、検定にかかった内容は、現代社会の『テーマ学習』『討論』のページであり、現代社会という教科の意義をおさえて判断してほしい」と述べた。
古川弁護士は、「文部省による検定の運用が非常にずさんで不透明であることが明らかになったが、一審判決でこれを退けたことは不当である」と述べた。
文部省からの控訴趣旨の1つには、「検定意見が出されたことと執筆を止めて損害をうけたことは無関係であり、原告の損害(20万円)は認められない」という苦しい理由がつけられているようだ。
高裁では、一審の勝訴判決の内容の幅を広げ、教科書観の見直しを視野に入れたものとなり、これまで以上の内容が期待できそうだ。
【千葉からの傍聴を、高校生の参加を】
千葉から今回は3人が参加した。横浜から東京に舞台が移って裁判へのアクセスが容易になり、さらに次回は午後3時半開廷ということで、授業を午前中やっても十分に間に合う。今後は千葉からの多数の参加で、85席の傍聴席を一杯にしたい。
また、高嶋さんは、この裁判にはぜひ高校生に来てもらいたいと言っている。生徒が参加することで、この教科書訴訟が生徒の学ぶ権利・学び方を問うものであり、彼らも注目しているという印象を裁判官に示したいということである。私の娘も浪人時代に一度傍聴したが、高校生のうちに聞くともっと良かったのにと言っていた。
今回は、公判後の報告集会で佐高信氏の講演があり好評だった。支援の会では毎回さまざまな企画を立てるようなので、楽しみながら参加してほしい。次回は来年1月18日(月)3時半である。
【高嶋さんの話を千葉で聞こう】
11月27日に開かれる今次の県社会科教研では、全体会の講師として高嶋さんを呼び、「沖縄から安保を問う/教科書訴訟をとおして」というテーマで話をしてもらう。高嶋さんのことであるので、ダイナミックで面白い話になると思う。沖縄から羽田へ降り、アクアライン経由で千葉に駆けつけるという高嶋さんに期待したい。多くの参加を。
10月12日、福岡高校の人事委員会裁決取り消し裁判が浦和地方裁判所第4民事部301号法廷で行われました。
今回は、福岡高校の全クラス担任25名の処分を是認した人事委員会の渡辺圭一委員の尋問が行われ、この裁判の一番の山場となりました。渡辺圭一氏は1995年から5年間の任期で埼玉県人事委員会委員となった人ですが、福岡高校の「日の丸」処分が行われた1990年の3月末まで埼玉県教育局指導部次長でした。実際の処分は5月23日に行われ、このとき彼は浦和第一女子高等学校長だったそうですが、彼の在任中に江野校長による混乱が福岡高校で起こり処分を前提にした事情聴取や組合との交渉が行われています。実際の処分が行われたのは1990年5月になりますが、彼がこの事件の処分決定の当事者の1人であることは誰が見ても明らかな事実です。
尋問で渡辺証人は、都合の悪い質問にはっきりと返事を返すことができず口ごもっていました。
こんなやり取りがありました。
吉田弁護士:あなたは、戦前の教育を受けているわけですが、戦前の学校で「日の丸・君が代」についてどのように教育されましたか?
渡辺 圭一:特別の教育は受けませんでした、覚えていません。
吉田弁護士:あなたは「日の丸」についてどう考えていますか?
渡辺 圭一:現在は人事委員なので、特別な考えを持っていません。
吉田弁護士:「君が代」の「君」とは何を指していますか?
渡辺 圭一:国民という考え方もあります。
渡辺圭一は、当時(1990年3月)埼玉県教育局指導部次長として、「日の丸・君が代」強制の先頭に立っていた人物です。校長会で「『日の丸・君が代』強制マニュアル」に沿って指示を出したり、組合との団体交渉でも「日の丸・君が代」問題のやり取りを担当していた人物です。そんな、当局の幹部、処分を下した当事者が、「中立」を装って県人事委員会委員として処分の適否を判断するという事が行われたのです。このような不公正な委員による裁決が正しいわけがありません。このような人事委員会の構成そのものが県民の不信をかうものであり、裁決そのものを歪め信用を損なっています。
また、渡辺尋問で得られた大きな価値は、県人事委員会委員である渡辺その人を法廷に呼び出し尋問を行ったということです。このような処分の意思決定過程そのものはいつも曖昧なまま、「県が」とか「当局が」というような言葉で済まされてきました。しかし、今回、意思決定過程に直接かかわった渡辺を尋問できたということは今後に大きな意味を持つことになるでしょう。
もう、組織の無責任は許されない時代になっていることを強く感じました。特に、所沢高校の闘いにとっては重要なものとなるでしょう。「お役人」にもキチンと責任をとってもらわねばなりません。
所沢高校の竹永公一氏が、新入生説明会で発言した内容が処分となったことを不当として、埼玉県人事委員会に求めていた審査請求の第1回口頭審理が、10月6日に行われた。集まった傍聴人は150人に及んだ。請求人側と県教委側がそれぞれ16人ずつ左右に向かい合い、正面に人事委員会委員3人が着席した。冒頭、審理に入る前に、請求人側から、人事委員会委員の1人渡辺圭一氏は、人事委員として不適切であるとの異議が表明された。(渡辺圭一氏に関する詳細については、本誌P2の記事/近正美「『日の丸』処分・福岡高校裁判/『人事委員会委員』を尋問」をお読み下さい。)福岡高校の処分に際して、処分を出した県教委の側にいた人物が、本来、公正中立であるべき人事委員会の一委員であることの不思議を思わないではいられなかった。
その後請求人側から、中山弁護士が意見陳述を行った。第1に、竹永氏は「校長の行う『入学式』に反対する旨述べた」とされているが、このような発言はない。事実誤認に基づいた処分である。第2に、竹永氏の発言は、新入生が不安を抱くことのないよう配慮したものであり、信用失墜行為にはあたらない。第3に、本人からの聴聞もなく、校長からの事故報告書だけを根拠に処分したことは、懲戒権の乱用であり、乱暴な行為である。これらの点を述べた後、今回の処分が、生徒の自主性、生徒の自立的活動を尊重してきた所沢高校のこれまでの学校運営根本への挑戦であり、生徒の学習する権利を侵害するものである、と強調した。
その後、竹永氏自身の意見陳述では、卒業記念祭開催に向け、生徒・親・教職員が民主的手続きを経て丁寧に取り組んできた経緯を語り、新入生説明会の状況を具体的に説明し、その際の校長の発言、そして竹永氏自身の発言を細かく語った。内田校長は、「時候の挨拶もそこそこに、新入生やその保護者に対する歓迎の言葉もないまま、入学式で入学を許可することのみを強調し、他のことは一切ふれませんでした」という。そして竹永氏の発言は、1学年代表として次の6点であった。「[1]在校生・教職員とも新入生を歓迎する旨の挨拶。[2]自主・自立の校風と入学後の主体的高校生活を期待する旨の事柄。[3]卒業記念祭の経過報告。[4]現時点における入学を祝う会の取り組みの報告。[5]現時点における内田校長の考え。[6]内田校長と話し合いを継続し、4月9日に混乱のないよう最大限努力するという教職員及び新1学年団の意志表明。」この発言の何をもって処分となったのか全く納得できない。しかも県教委は、学校長の事故報告書のみを判断基準とし、竹永さん本人からの聴聞は得ていない。3月20日、21日に県教委から管理主事が来校したが、結局竹永さん本人からは何も聞か
ずに帰ってしまったという事実も明らかにされた。
その後、同僚の岩下氏と保護者の谷村氏からの意見陳述が続いた。岩下氏からは、「竹永さんの発言は、新入生と父母の不安を解こうとしたもので、当然で正当なものであり、しかもその発言は、竹永さん個人としてのものではなく、学年会で集団的に討議し、決定した内容を学年代表として話したものである」こと、「県教委の処分が極めて意図的になされたこと」等を語り、「県教委はよりにもよって、所高で最も信頼の厚い教員を信用失墜行為として処分したのです」と語った。谷村氏は、「所沢高校への信用、ひいては埼玉県立高等学校の信用を失わせたのは内田校長であり、信用を繋ぎとめたのは竹永先生だったのです」と語った。
請求人側からの意見陳述の数々は、まさに生徒の自主性を尊重し、生徒自治を育む教育を、教員と親が一体となって取り組んでいる所沢高校の教育を彷彿とさせるものばかりだった。その一方で、県教委側は、終始、鍛冶弁護士1人だけが答弁し、しかも非常に誠意のない姿勢が明らかだった。小声で、こそこそ話したり、傍聴人に言う必要はないと言ってみたり。何が処分の対象なのか、「信用失墜行為」とは何なのかも明らかにせず、請求人側が質問しても、「準備書面にあるとおり」「文書で回答する」などと言うばかりである。その後、「証拠となるものは学校長の事故報告書だけなのか」という追及に対して、録音テープの存在を仄めかした。ところが出してほしいという要求に対しては、「その必要は認めない」とか、ボソボソ等の曖昧な姿勢の繰り返し。結局、人事委員会委員長も「(県教委側が作成した)準備書面の記載があまりに・・・(粗雑すぎる)」との感想めいた発言をした後、証拠の提出を「強く要望」した。
県教委側の不誠実さ、いいかげんさにあきれるばかりの口頭審理だった。傍聴席からは、ため息や非難の声の連続だった。しかし、あきれてばかりはいられない。このように、いいかげんに、教員への処分がまかり通ってしまうことは、非常に恐ろしい事態ではないか。そして中教審答申は、職員会議の補助機関化や、校長権限の強化を謳っている。なんとしてもこの処分は撤回させなければならないと思う。生徒が主役の学校を守る為に。
10月16日(金)朝日新聞朝刊に文部省が行った今春の卒業式・入学式での「日の丸・君が代」実施状況の調査結果が出ていました。(その後10月29日の同紙に訂正記事が出ました。以下、数字は訂正記事による。)「日の丸」掲揚と「君が代」斉唱を実施した公立学校の比率は、3年前の調査より0.2〜2.5ポイント増と、わずかに増えたことが15日に文部省が発表した調査結果(及び28日の訂正)でわかりました。小中高校の全校で完全実施したのは、前回調査より1県増えて(当初発表した2県は誤り)24県となりました。新たに完全実施となったのが、滋賀、山口、徳島の3県、完全実施でなくなった県が石川、青森で、結果1県の増となりました。結果は下表のとおりです。
【卒業式】 |
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99.0(98.4) | 88.2(87.7) |
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98.5(98.0) | 84.8(84.2) |
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98.1(97.8) | 80.1(77.6) |
【入学式】 | ||
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98.8(98.4) | 86.6(85.8) |
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98.4(98.0) | 84.7(84.0) |
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98.1(97.9) | 80.6(78.4) |
文部省や県教委が処分・弾圧、嫌がらせをこれだけやっても全国の24県でしか「完全実施」できないのが現状です。これをどう考えるべきでしょうか。真面目に考えれば、一律100%の強制自体に無理があると考えることが自明です。この千葉県でさえ100%でないのです。
県の公文書(情報公開推進委員会及び教育行政をただす会より提供されました)によると、公立高校で今春の卒業式・入学式で「日の丸」掲揚・「君が代」斉唱が完全実施されていない高校は10校におよびます。しかも、義務制の学校でも1校入学式で未実施の学校があります。未実施の理由は、「入学式・着任式・始業式を同日に行ったため、時間的な理由で国歌斉唱を実施しなかった(Y市)」とあります。この理由の真偽はわかりませんが、今の中学校の実情から言って「時間がない」というような単純な理由で斉唱が行われなかったとは考えられません。この中学校では厳しいやり取りが職員と校長との間であったであろう事は容易に察しがつきます。
文部省は、このような調査結果に大変不満なようです。現在は、「事後指導」になっているこの調査を今後は卒業式前に行って、「事前指導」を強めようとしています。また、「日の丸・君が代」実施率がまだ「不十分だ」として同日付で実施の指導を求める都道府県教委あて通知が出されたそうです。この「通知」については、現在公文書公開制度を利用して県教委に公開を求めていますので次回の通信で報告できると思います。
「日の丸・君が代」の完全実施を掲げてはみたものの、そのこぶしの下ろし処に苦労しているのが文部省の本音です。
11月7日(土) | 14:00〜 | 千葉高教組「県教研全体会/教課審答申に寄せる財界の意図」 〈講師:渡辺治(一橋大学教授)〉 |
教育会館新館501号 |
11月8日(日) | 10:00〜 | 三番瀬わくわくワークショップ | 三番瀬の浜 |
11月8日(日) | 14:00〜 | 名護市民投票裁判と沖縄知事選を考える東京集会 | 原宿・神宮前区民会館 |
11月12日(木) | 18:30〜 | 自由主義史観を問う・世界の変容と歴史修正主義 | 豊島区民センター |
11月13日(金) | 14:00〜 | 千葉高教組「98人事異動対策会議」 | 千葉・セントラルプラザ8階会議室 |
11月14日(土) | 13:00〜 | ポップコーン・コンサート | 船橋勤労市民センター |
11月14日(土) | 14:00〜 | 石川一雄さんに聞く「部落差別と狭山事件」 | 東武東上線志木駅 立教高校図書館2階視聴覚室 |
11月14日(土) | 13:00〜 | 母親と教師の語る会「例会」 | 松戸市民劇場 |
11月15日(日) | 10:00〜 | 立川駐屯地反対行動 | 立川駅北口・いこいの場 |
11月16日(月) | 13:00〜 | 千葉高教組「県教研/民主的学校づくり分科会」 | 教育会館 |
11月19日(木) | 14:30〜 | 憲法9条ポロシャツを口実とした 小倉養護学校研究発表妨害暴行事件(カオル裁判) |
福岡地裁小倉支部204号 |
11月21日(土) | 14:00〜 | 千葉高教組「県教研/『平和・民族・人権』分科会」 | 教育会館 |
11月21日(土) | 18:00〜 | 反戦・反核東京集会 | 文京区民センター |
11月21日(土) | 16:30〜 | 命どぅ宝・平和世コンサート | 浅草雷5656会館 |
11月25日(水) | 19:00〜 | マパンケ村で起きたこと | 東京ウィメンズプラザ・視聴覚室 |
11月25日(水) | 13:30〜 | 中村先生クビ裁判(教頭傷害事件)判決 | 東京高裁822号 |
11月27日(金) | 10:00〜 14:00〜 |
千葉高教組「社会科教研/分科会」 「同/講演会」〈講師:高嶋伸欣(横浜教科書裁判原告)〉 |
教育会館 |