ひのきみ通信 第5号

1997年10月7日


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情報裁判に勝利して 小金高校元保護者・兵頭雅子
沖縄の心に触れる高校生
『今・子どもたちが危ない! 教育も平和も危ない!!』[1]
 〜「健全な子供を育てる歴史教科書を求める県民のタベ」に参加して〜
旭農業高校分会・中山文夫
家永教科書裁判
 『検定』を『検定』する最高裁
若松高校分会・野口宏
『日の丸・君が代』全国の状況[4] 佐倉高校分会・近 正美
お知らせ

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情報裁判に勝利して

(小金高校元保護者・兵頭雅子)

 8月6日、千葉地方裁判所で花井保、元・小金高校長(現・成田北高校長)の公務出張記録を開示せよ、という判決が下りました。原告といっても、私はたまたま請求者であったために原告になってしまっていますが、裁判はほとんど小金高校の保護者でもあった吉永満夫弁護士が書かれた大量の準備書面で展開した「プライバシ−論」によって進められました。専門の学者にも引けを取らないその内容はこれからも評価されるものと確信しています。

 1994年から、小金高校で続いている教員と親の運動は、いろいろに広がりを見せていますが、その1つが、教育を裁判という手段に訴えて、県教委や行政と直接向かい合うというやり方です。無論、私たちの多くは裁判所に入る事も初めてでした。その運動の中の保護者に弁護士さんがいたのも大きな偶然でした。私たちが運動の中で学んだ事の中で、核心とも言える事は、親や市民は教育にかかわることができるし、かかわるべきだという事です。私たちの子どもはたいてい卒業してしまっていて既に保護者ではないのですが、そんなことは問題ではなくて、国民がみんなで将来を担うであろう子どもたちに、何を教え、どのような大人になることを願うのか、に関心と責任を持つことは至極当たり前のことだということです。

 それで、いまだに小金高校にかかわっているのですが、教員の異動や、教育内容に全く親がかかわることができない現状はとても問題があると思っています。もちろん、親や教員の状況は様々で、まだまだ双方の状況の多くは希望を抱けるものではありません。
 「小金高校だからできる」とよく言われます。それは分かります。小金で行われているような教員と親が互いに理解し合い、共に手を組んで、教育に取り組むような関係はそうそうどこでもという訳にはいきません。だからといって、そういう学校がたくさん増えるまで待っている必要もない訳で、できるところから始める、まず気づいた人から声を上げる、そうしているうちに次第に状況がよい方向ヘ変わっていく、それしかないと思っています。これまでのことも、2つの裁判も、考えもしなかったことですが、そういうことができたことは、それがなかった事を考えればそれなりに意味があると、手前味噌ですが、思っています。

 今、私たちの教員への理解は前よりはずいぷん深まったと思います。自分たちの今までを知っているから、まだそこまで理解するに至っていない親たちの考えることも、そうでない親を多く相手にしていてとても親と―緒に学校運営を、などとは考えられない教員たちの思いも、少し理解できるようになりました。そこで思うのは、目の前の親や教員にとらわれずに、親として、教員として、それぞれが教育について考え、子どもたちの事を考え、行動すれば、自ずとどこかで出会えるということです。
 こうやって、少しずつ出会いの輪が広がっていけぱ状況は少しずつ変わっていくでしょう。

 この裁判の元となった花井校長の出張記録の開示請求は、正直に言うとそれほど強い覚悟の上でしたものではありません。不譲慎かもしれませんが、発端は軽い気持ちでしたのです。それが、千葉県で最初の情報裁判の判決になったことと、食糧費の公開等に端を発した情報公開に対する関心が高まったことが相乗効果となってマスコミの関心を集めたのです。ですから、白状すると、あくまで教育問題と考えている私たちはどこかしっくりこない感じを持ち続けていました。別のものが―人歩きしているような…。
 私たちが花井校長の出張記録の公開を求めたのは、保護者が子どもの学校教育の責任者である校長の公務を知るのは当然、と言う考えからですが「校長」を「公務員」と置き換えても何ら不都合はないわけです。そして、「保護者」を「市民」に置き換えてもいい、そうなれば、それはそれで意味があると考えることができて気分的にすっきりしました。
 今では、開き直りの心境で、機会をとらえてはマスコミにも小金の運動や松本教育裁判のことを宣伝しています。

 なぜ、出張の記録を公開することができないのか、と考えます。先日、9月26日の松本教育裁判で、証人として2回目の出廷をした花井校長は、吉永弁護士の「人事に関していつ、県教委に行ったか」という質問に、メモを見て法廷に臨んだはずが、頭を抱え、考え、言いよどむことを繰り返しました。情報裁判がかかわっているとは気がつかなかったのですが、やはり、関係があるのでしょう。
 私たちは、子供の教育のために県教委ヘ出張するのに、なぜ秘密にしなければならないのかと思いましたが、校長や県教委にとって教員の人事は秘密にしなければならないことのようです。
 松本教育裁判でも私たちが言っているように、教員の人事は教育の重要な事柄で、子どもたちや学校にとっての重大事です。学校運営や教員人事なが真に子どもの教育という原点に立って行われているなら親や世間に秘密にする必要はないのですから推して知るべしです。
 今日の役人の腐敗も、役職・肩書きが行政を行い、それをする個人の責任は問われない、日本的な官僚体質が引き起こしていることがよく分かります。花井校長がよく言ったように、個人としては別の意見を持っていても、役職・立場がそうさせることがたくさんあるようです。

 情報裁判は、裁判自体にも大きな意味があるのですが、もう一方の松本教育裁判はその過程に大きな意味があります。法廷という場で県教委に直に教育の問題を突きつけ、私たちの考える教育のあるべき姿を主張できる場になっています。このような場が他にあったでしょうか。証人尋問に入ってその重要さを実感しています。
 教員と親とが一体となって、できれば子どももまじえながら県教委ヘの尋問事項を考えることができれば、何かが生まれる予感がします。みんなで裁判をますます意味のあるものにしていくことを願っています。
 情報裁判は、予想通り責任を取ることができない行政側が控訴し、東京高裁へと移ります。これまで県側は情報公開に対してまともな議論は何一つ主張できていません。自ら学習して、判断しようという気はサラサラなく、風見鶏のように他県の様子をうかがい、世間の動きを見るだけです。情報公開そのものについても、真剣に受け止めようとする姿勢は全く見られません。恐らく、ほとんどの日本の官公庁、特に市町村などの末端ほどそうなのでしょう、全部とは言いません、どこにでも心ある人はいます。こういうことも、要は行動を起こして明らかになったのです。何もしなければ何も生まれません。
 これからも複雑にリンクしながら様々なところで、様々な行動を起こしていきましょう。千葉だけでなく、日本の、世界中の子どもたちが幸せになる、それは取りも直さず、私たちが、みんなが幸せになることですね。そういう日がくることを祈りつつ…。

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沖縄の心に触れる高校生

9月20日に行われた小金高校文化祭では、2年生が沖縄修学旅行を前にして沖縄のエイサーと三味線の演奏を披露した。三味線は空き缶から作った「カンカラ三味線」。エイサーは、事前学習で沖縄舞踊を見せていただいた沖縄クラブの仲井真さんたち3人の方の指導もと、力強い踊りとなった。

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『今・子どもたちが危ない! 教育も平和も危ない!!』[1]

〜「健全な子供を育てる歴史教科書を求める県民のタベ」に参加して〜

(旭農業高校分会・中山文夫)

 1997年9月6日(土)午後の船橋旭高校でおこなわれた「情報公開学習会」参加の後、干葉市文化センタ−に直行した。干葉市内でのポスターで知った友人がこの『ひのきみ通信』に掲載して、どんな人が参加し、どんな主張をするのか興味があって、ぜひ参加してみたいと思った。千葉市文化センター前には当日も大看板があった。会場に到着したのは7:30ころ、参加費1000円を払い、参加証《住所・氏名を記入し、袋に入った資料をもらった。袋の中には[1]レジュメ(表に日程と講師紹介、裏に自治体に求める国ヘの中学校の社会科の教科書に記載されている「従軍慰安婦」の記述の削除を求める意見書(案)が書かれてある)[2]4月29日(祝)「みどりの日」を「昭和の日」に改める請願署名用紙と呼びかけ文[3]県議会議員に対する要望(案)[4]干葉県議会議員名簿(自民党)[5]日本会議紹介・入会の勧誘チラシ[6]呉善花(講師)の最新本案内チラシ[7]産経新聞(97年8/20主張「特攻隊や玉砕テーマの記録ビデオ『天翔る青春』小中学生に反響〜300回以上全国上映、教材にも、「命かけて戦った人を忘れない」「あまりにも情けない今の日本」・8/30主張「外圧から教科書検定守れ 」〜「家永本」上回る偏向目立つ)[8]新しい歴史教科書をつくる会趣意書[9]ドキュメント映画「天遡る青春』チラシ[10]ネットワ−ク「日本再建」のご案内チラシ[11]日本政策研究センター発行ブックレット&月刊誌案内チラシと同センター発行の『東郷平八郎』が入っていた。受付には日本政策センタ−の月刊誌『明日ヘの選択』贈呈本や日本会議の月刊誌『日本の息吹』や案内本『誇りある国づくり』、日本政策研究センター発行のブックレットや新編日本史改め最新日本史(国書刊行会)やビデオなどが販売されていた。
 ホールに入るとすでに1人目の呉善花(オ・ソンファ)さんの講演「『反日』の根本にあるもの」が始まっていた。上段の席はテープで侵入禁止状態になっていたが、何人かが入っていた。私は中央上段右端に座り、ほぼ最後部から会場全体を見渡したが、全体で150人ほどの参加者数だと思われる。多くはご高齢の方々が多く、若そうな方は教職員のように見える。
 全体の日程は講演1・呉善花、講演2・伊藤哲夫(日本政策研究センター所長)「なぜこんな教科書ができるのか」、アピ−ル1・県内中学校教師(船橋の斎藤たかゆき先生)、アピール2・中学生の親(習志野の松本きみこさん)、最後に決意表明のように藤井(日本の心をはぐくむ会)・川上すすむ(歴史教科書を考える干葉県民の会世話人)・中台四街道市長・宍倉せいぞう干葉市議・向後かずお千葉市議が登壇した。当日出席予定の県議会議員は鈴木よしのり(柏)と田中むねたか(白井町)だったらしいが欠席した。最後にレジュメの裏に掲載してある意見書(案)を参加者全員で拍手で了承し、県議会議負への要請ハガキ作戦を確認した。
 それそれの内容の要旨は次のようなものであった。

 講演1・呉善花(韓国人エッセスト)「『反日』の根本にあるもの」は韓国人の反日感情の背景を述べたものである。
 1つは歴史的に韓国は中華思想を持ち、辺境の島国で遅れていた日本を文化・経済的に発展させてやったと思っていること。2つめは現在の日本の経済的発展もこうした韓国のおかげであり、しかも、経済的発展をしている日本人はもともとは韓国入の末裔であると思っていること。すると韓国人が支配された日本人は自分たちの民族の末裔に支配されたことになり、その間に非人道的行為をした日本人も誇り高い韓国人の末商ということになり、これは矛盾である。教育も日本を悪くしか言わないが、実際日本製のゲ−ムやマンガが子どもたちには人気があり、韓国の学校教育の内容と日常生活に大きなギャップがある。私も子どむの頃は日本に対し批判的であったが、留学生の経験により個人的に付き合えば、いい人か多い。日本を批判してもいいが、日本を知るべきで、冷静になるべきである。

 講演2・伊藤哲夫(日本政策研究センター所長)「なぜこんな教科書ができるのか」は日本の教科書づくりの背景を分析したのもである。
 ただ頭を下げればいいのではなく、違いを明確にすることが重要だ。例えば、現在中国訪問中の橋本首相の態度がへりくだり過ぎている。韓国人クラプでは普通の客はホステスと一緒に歌でも歌おうと思って日本の過去のことを謝ったりする。私は1時間論争をした。するとホステスは勉強になったと言う。現在の中学校教科書の『従軍慰安婦問題』だが、従軍看護婦とか従軍記者という言葉はあっても従軍慰安婦という言葉は当時なかった。軍隊の周りで商売するものに従軍はつけない。従軍豆腐屋とか従軍納豆屋などという言葉がありますか?また、女性たちは強制的に連行されたというが、証明されていない。特に軍が組織的に関与したという証拠もない。裁判をしている従軍慰安婦の人たちの訴状には「お金で買われた」と書いてある。本では強制連行といっている。どちらを信用しますか?当然、裁判の訴状の方でしょう。今回の問題は吉田清治という日本人が済州島での聞き取りを本にしたのかきっかけだったが、地元の地方記者が強制連行の事実がなかったことを立証している、干葉大の秦郁彦さんも立証している。間違った日本人がウソをついて韓国人に火をつけたのだ。大分の元全共闘の青 柳という者がソウルで400万円をもって、裁判を呼びかけるビラをまいた。外務省の高官も韓国には従軍慰安婦問題はなく、日本人がつくった運動だと言っている、歴史教育も日教組によって日露戦争は中国侵略の出発のように教えられているが、アシア独立の父である東郷平八郎は教えられていない。よかれと思って悪事をしたことがあるかもしれないが、朝鮮支配も総督府勤務の子孫の話では「父はよくやった。終戦後、帰るとき朝鮮人は涙を流して送ってくれた」と言っている。現在の北朝鮮の食料危機のように当時の朝鮮もオンドルや焼き畑で木を切り遇ぎて、肥沃な土壊を流してしまった。そこに日本人がやってきて植林をはじめ、農地整理をやり、川を改修し、学校もつくってやった。今年5月サンケイ新聞がスクープした宮城の歴史授業の生徒の感想は「ちょっとおかしいよ、日本人。頭おかしいよ。人を殺して喜んでいるの、1000万人殺してたのしいの?」などである。こんな反応だけでいいのか?こどもたちが不幸だ。知ったら心震えるような史実が靖国神社のユウシュウカンにある。昭和19年7月10日に戦友を思ってルソン島で流したヤシの実が31年間の時を経て、出雲の八代神社沖に流 れ着いた。特攻隊の遺書や母の歌にも感動する。ロシアの女性が特攻隊の誇り高き強い精神力に感激した。感動は国境を越えて理解できるのだ。しかし、今の教科書採択制度は本来教育委員長が決定することになっているが、日教組が攻撃するので、審議会をつくる。その審議会のメンバ−は日教組組合員なので、反日的であれば、あるほど教科書が売れる。教科書会社の社長は苦汁にみちて、「教育委員長が責任をもって採択してください」と言っている。しかし、大阪や広島などは同和教育問題協議会という部落解放同盟や朝鮮総連などが監視する組織があり、そこが教科書レポ−トを発行するので、教科書会社は資料よりこのレポートを見て教科書を作っている。私は何も軍国主義になれと言っているのではない。人間の感性を育てろと言っているのだ。
(次号へつづく)

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県議会議員に対する要望(案)

拝啓 先生におかれましては、県民の為に日夜ご活躍され心から感謝申し上げます。
 さて、先生もご承知のとおり、今年の中学の歴史教科書は、その執筆の基本姿勢が「日本を糾弾する」ごとき態度で書かれ、特に「慰安婦」の記述においては、あたかも当時の軍が関与したかの如く書かれており、公正なはずの国の検定を通ったとは到底信じられません。
 このような現状を放置しておくことは、祖国のために命を捧げた英霊に顔向けができないばかりか、将米の日本を担う青少年の人格形成に重大な悪影響を及ぼします。
 志を同じくする先生達と一致協力して、県議会において「従軍慰安婦」の記述を削除する意見書を決議され、政府に強く要望して頂くことを切にお願い申し上げます。
 日本人としての先生のご活躍を心から祈っております。
[会場で配られた千葉県自民党議員宛の要請はがき文案]


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家永教科書裁判

『検定』を『検定』する最高裁

若松高校分会・野口宏

 8月29日。家永裁判最後の判決に立ち会いたくて最高裁に赴いた。もとより傍聴のための抽選に当たるとは思わなかったが、もし当たっても、その権利は、はるばる沖縄などからやってきた熱心な人に譲るつもりでいた。私は裁判開始以来千葉県連絡会を作り、その事務局長をやったきたが、ここ数年は会費を払い、時々カンパを分会や支部にお願いするぐらいで、積極的な運動からは遠ざかっていたので少々後ろめたい気持ちもあったのである。それでも、昨年の文化の日に、中執の佐久間さんに励まされながら、ご無沙汰していた会員に連絡をし、若い人たちやお母さんの発言を軸に、「勝利を目指す集会」を成功させることが出来たことは、千葉県連とその運動の締めくくりの意味もあって、私にとっては極めて意義深いものであった。
 判決は異例のロ頭弁論を開くなど、期待を持たせていただけに思ったほど劇的な勝利ではなかったが、それでも、最高裁が初めて、検定の個々の部分にせよ違法があるとした意義は、判決報告集会で家永氏が「これにより、文部省の検定が違法を含むものであることが明らかになった」と述べたとおり、決して過小評価すべきではなかろう。
 弁護士が強調していたが、あと2箇所についても5人の裁判官の意見は3対2、もし中間の―人が違法側につけば高裁の3箇所の違法を継承した上、一気に3箇所、都合9件中6箇所の違法が付け加わったのだと、水面下のきわどい模様を明らかにしてくれた。
 その解説を聞きながら私は司法当局の自己矛盾を感じざるを得なかった。つまり、検定制度を合憲としておきながら、その合憲である制度のもとにおける文部省の検定が違法を含むものであるという。これでは家永氏の発したそもそもの問いかけに全く答えていないのと同じである。正確を期すための誤字脱字のチェックなら国家機関などなくてもできる。教育的配慮なら教師・父母の良識を信ずればよい。真理・真実を国家権力の価値観で裁可してはならないというのが「学問の自由」なのではないか。その自由を侵したから訴訟が起きたのだ。
 だから、今度の最高裁判決では(第1次訴訟一審高津判決以来そうであるが)、文部省の検定を司法が検定するという奇妙なことが起きているのである。しかも個々の検定箇所において、その当該裁判官団の中でも3対2の僅差で「判決」がなされたという。真実を認めるのに多数決原理が持ちこまれているのである。こんなことをしていると、これらの裁判官を任命した首相が今度は裁判官の検定を検定するようなことになりかねない。
 それにしても憲政記念館での報告集会で私たちの前に姿を現した家永氏は、高齢と病弱のため、顔は蝋のように青白く、テレビのライトに照らされるとその青白い顔がいつそう白く輝き、その姿はもはや求道者のようであった。32年間、人生の後半のすべてを「再び戦争の過ちを犯さない日本の建設」、そしてそのための「学問の自由」の確立を目指して説を曲げずに闘い抜いてきた家永氏とその精神を「検定」することほど愚かなことはない。29日はそのことをすべての国民の前に教えてくれたような気がしてならない。
 真実のかけらも節操もなく党利党略のために離合集散を繰り返す政治家や一部労働運動の指導者はこの日の家永さんをまぶしくて見ることが出来なかったのではなかろうか。

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『日の丸・君が代』全国の状況[4]

佐倉高校分会・近 正美

・『日の丸』処分、宮城県人事委員会審理を傍聴して

 7月末、仙台で宮城県人事委員会審理が行われました。宮域県としては12年振りの人事委員会公開口頭審理だそうです。案件は、以前この欄で紹介した、県立古川工業高校の工藤章人先生に対する『日の丸』処分です。
 12年振りということで、人事委員会事務局も何をどうしてよいのかわからないという感じ、審理の前3分間のマスコミの撮影許可というのも珍しいことのように思いますが、その時に「傍聴の皆さんで写真を撮りたい方はどうぞ」と言うのには驚きました。さすが宮城県、「県民に開かれている?」のでしょうか。また、驚いたのは、提訴後1年以上たってからの公開審理だということです。宮城県では、準備段階のやり取り(求釈明など)は非公開だそうで、今回いきなり当時の校長の県教委側主尋問でした。
 さて、ここで登場するのが、県教委代理人の秋山弁護士です。この弁護士、「新しい教科書を作る会」の発起人であったりする、右翼弁護士で、家永教科書裁判の国側代理人もやっていた人だそうです。この弁護士、しきりと時計を気にしていて、最後には人事委員に「僕は4時には帰る予定できてるんだ」と発言する始末。自分は「東京の弁護士で偉いんだ」ということが顔に出ていました。
 もう―つ驚いたのが、この証人の元・校長です。まるで「機械」が喋つているような声、これは普段からそうなのかもしれません。しかし、証言の内容がほとんど「ハイ」か「イイエ」のどちらかで、本人はほとんど何も語っていない状態でした。秋山弁護士の誘導のもと「ハイ」「イイエ」を繰り返すばかり、全く呆れてしまいました。しかも、宮城県は管理職試験というものがなく、教頭・校長は―本釣りで上司が推薦して登用されているそうで、またびっくりです。
 右翼の県代理人弁護士と「ロボット」校長のやり取りで中身は全くありませんでしたが、工藤先生をどうにかして「とんでもない」教員であると印象づけようと必死でした。最後にこちらから人事委員会に「職権で事故報告書を県教委から提出させるように」と要望すると、何と、県教委代理人は「そのような文書はありません」とつっぱね、証人の元・校長も「私も出しておりません」と言い切ってしまいました。
 さて、この人事委員会審理これからが本番です。宮城県人事委員会も工藤先生も不慣れ、県教委の役人は言うに及ばず、代理人の秋山弁護士はもっと疎いこの審理。今後のことを考えると、誰がこの審理の主導権を握っていくかが「かぎ」となるでしょう。 次回、10月29日(水)の審理が山場です。

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お知らせ

10月10日(金) 12:30〜 私の学び遊び体験と「教育改革」 河合塾本校2F・A−21
10月11日(土) 18:00〜 安保を考える−沖縄から、アジアから− シニアワ−ク東京
10月13日(月) 18:30〜 戦争はどう展示されているか−世界の戦争博物館− 東京ウィメンズプラザ第2会議室B
10月14日(火) 13:30〜 中国人「慰安婦」裁判 東京地裁712号
10月14日(火) 19:00〜 南風講座[1]反戦地主としていきる 島袋善祐 金町地区センター
10月15日(水) 13:30〜 731部隊・南京訴訟原告本人尋問 東京地裁103号
10月17日(金) 18:30〜 731部隊の証言を聞く会 星陵会館
10月18日(土) 18:00〜 講演会「命どぅ宝を語ろう・出会いを求めて」 千駄ヶ谷区民会館
10月20日(月) 13:30〜 「豊かな海づくり大会」住民訴訟 千葉地裁505
10月21日(火) 19:00〜 米国への「思いやり予算」を返せ10・21集会 文京シビックセンター
10月24日(金) 14:20〜 松本教育裁判・花井校長尋問 松戸地裁
10月25日(土) 13:30〜 いま問われる戦後保障と教科書 カンダパンセ
10月29日(水) 13:30〜 宮城県人事委員会公開口頭審理・工藤先生『日の丸』処分  
10月31日(金) 13:30〜 中国人「慰安婦」裁判 東京地裁709号
10月31日(金) 19:00〜 沖縄からのメッッセ−ジ−女・基地・未来−
 高里鈴代さんに聴く
浦和市民プラザWAVE101大ホール
11月3日(月) 14:00〜 52年目の宿題「教えられなかったアジアの戦後」 学習院大学目白キャンパス西4-102教室
11月3日(月) 9:30
〜16:30
「戦争と女性への暴力」国際会議公開シンボジウム 全電通ホール
11月5日(水) 13:00〜 横浜教科書裁判 横浜地裁
 (横浜家庭裁判所脇プレハブ法廷)
11月7日(金) 18:00〜 千葉県・千葉市合同教育研究集会
 「子ども若者からのメッセ−ジ」 早乙女勝元
教育会館大ホール
11月8日(土) 16:00〜 近現代史を問う『自由主義史観』 河合塾COSMO-201
11月8日(土)
 〜9日(日)
  松代大本営と「無言館」を訪ねて 参加費・13000円
 申込・043-276-0715 締切・10月18日
 
10月28日(火)
〜11月1日(土)
  ハルモニの絵画展−元・「従軍慰安婦」が描く恨と希望− 東京YWCA
11月3日(月)   ハルモニの絵画展−元・「従軍慰安婦」が描く恨と希望− 全電通ホール
11月6日(木)
 〜7日(金)
  ハルモニの絵画展−元・「従軍慰安婦」が描く恨と希望− 江東区総合区民センター

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