ひのきみ通信 第209号

2017年11月11日



「さようなら原発 さようなら戦争 全国集会」(9.18 代々木公園)

目次

「自公大勝」の真相
 17衆議院総選挙における民意の動向
みつはし ひさお(千葉高退教)
『朝日10/29号』の記事
 「授業・生活指導・・・『一律に』」雑感
T.T.0557(千葉高教組市川
 支部「ひょうたん島研究会」)
朝鮮学校無償化問題を考える
 〜割れた地裁判決・原告の声・『共生』を探る〜
石井 泉(天羽高校分会)

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「自公大勝」の真相

17衆議院総選挙における民意の動向

みつはし ひさお(千葉高退教)

 さる10月22日に投票が行なわれた第48回衆議院総選挙の選挙結果は、「自公大勝」「3分の2維持」などとマスコミによって報道されている。この「自公大勝」なる表現は、一体どのような事実を表わしているのだろうか。この表現をまともに解釈すれば、あたかも国民の圧倒的多数が自公を支持していると受け取られかねないし、現にそのように誤解している国民も少なくないのではないか。このような誤解によって、一方では自らの政権が国民の圧倒的支持を受けたと尊大になり、他方ではわたしたちの運動が力不足であったと必要以上に卑下するというような事態を招くとしたら、「自公大勝」なる表現の罪は大きいと言わざるを得ない。
 そこで、今回総選挙の得票データをもとに、客観的数値から選挙結果を分析してみよう。まず、各党の獲得議席数である(「無1」は野党系無所属、「無2」は与党系無所属と思われるものだが、分類は正確ではない)。

  自民  公明  立民  希望 共産  維新  社民  諸派  無1  無2 
小選挙区  215  17  18  23 
比例代表 66  21  37  32  11 
合計 281  29  54  50  12  11  23 

 なるほど、議席数だけで見れば、自公の圧勝である。しかし、今回の選挙前、「市民連合」および市民運動の尽力により、市民と立憲野党の共闘が成立しつつあった。それが、選挙直前の小池百合子による乱入の結果、野党共闘の大きな柱であった民進党が崩壊してしまった。「希望の党」乱入による政権批判票の分散が、与党に圧倒的に有利な情勢を作ったことは、言を待つまでもない。
 だが、客観的データを以て分析すると、政権批判票はどれだけ投ぜられたのだろうか。以下、市民と野党の共闘が完全に成立した場合の選挙結果シミュレーションをご覧いただきたい。なお、このシミュレーションは、すべての小選挙区で、自民・公明・保守系無所属が候補者を統一し、立民・希望・共産・社民・野党系無所属が候補者を統一するという仮定で計算したものである。もちろん、希望の中に保守系の人が多くいることはマイナスして考えなくてはならないし、市民と野党の統一が実現できれば合算以上の票を期待できることはプラスして考えなくてはならない。しかし、いずれの効果も正確に定量化することは困難なので、ここでは無視することにした。また、比例東海ブロックの立憲民主の候補者数が獲得議席数より少なかったため、立憲民主の1議席が自民に回った。表では、比例代表の議席数を自民公明から野党連合に1議席戻している。

  自民公明  野党連合  維新 
小選挙区  158 128 6
比例代表 86 82 8
合計 244 210 11

 以上のとおり、選挙結果は、自公は過半数を維持するものの大幅議席減、野党連合は大躍進というものである。もちろん、シミュレーションには誤差が含まれている。だが、大まかな野党共闘の効果は知ることができると言えよう。
 つまり、「自公大勝」などという表現は、非民主的な選挙制度と今回の選挙情勢による、民意と議席数との大きな乖離の結果にすぎず、数字のまやかしでしかないのである。国民は、政権を圧倒的に支持したわけではない。しかし残念ながら、野党連合を圧倒的に支持したわけでもない。まあ、ごく第三者的表現を使えば、「痛み分け、引き分け」というのが公平な評価ではないだろうか。
 だが、安倍総理が自らに最も有利な時期を狙って解散した結果が、以上のとおりなのである。解散を決定した時点では野党共闘はある程度見込まれていたわけであるから、解散にあたっての安倍総理の目論見は過半数獲得、森友・加計問題のみそぎであって、よもや3分の2維持など、当人も思っていなかったのではないだろうか。さらに言えば、安倍政権支持率が低迷していた6・7月に選挙が行なわれていれば、政権交代の可能性も十分に考えられたのではないだろうか。
 以上、現行の選挙制度にもとづいてシミュレーションを行なってきたわけだが、じつはもっと重要なのは、比例代表制における各党の得票率である。各党の支持率はマスコミなどの世論調査で発表されるが、国民が正式な手続のもとで表明した各党の支持率は比例代表制における各党の得票率だけだからである。小選挙区制の得票率は、各選挙区の立候補者の有無などに大きく左右されるため、信頼できる数値にはならない。そこで、今回の比例代表制の得票率から、民意の動向を分析してみることにする。

  自民  公明  立民  希望 共産  維新  社民  諸派 
比例得票率 33.27 12.51 19.88 17.35 7.89 6.07 1.68 1.15

 これを、さきほどの「自民公明」対「野党連合」という形に集計すると、つぎのような結果になる。

  自民公明  野党連合  維新 
比例得票率 45.79 46.82 6.07

 なんと、野党連合得票率の方が自公より多いのである。現行のブロック制による歪みのため、比例代表制であっても正確な民意が反映されていないのである。ちなみに、今回の比例代表の得票率をもとに、衆議院465議席を比例配分すると、以下のようになる。

  自民  公明  立民  希望 共産  維新  社民  諸派 
比例議席数 155 58 93 81 37 28 8 5

 このあたりの数字が、今回の選挙結果を正当に表わしたものと言えよう。
 この結果から見ても、市民と野党の共闘路線は間違っておらず、これまで以上に推進する必要がある。にもかかわらず、ごくわずかな人間でも、共闘に楔を打ち込むことができる。これを防ぐためには、まっとうな選挙制度に変えてゆく必要があるだろう。

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『朝日10/29号』の記事
「授業・生活指導・・・『一律に』」雑感

T.T.0557(千葉高教組市川支部「ひょうたん島研究会」)

 10月29日(日)の『朝日』教育面に、「授業・生活指導・・・『一律に』/学校現場で広がるスタンダード」という記事が載った。読んだらあんまり面白いんで思わず笑ってしまった−のではなく、不安になってしまった。
 実はこの記事、我が「ひょうたん島研究会」の機関紙『勝っ支部通信11/1号』で紹介したのだが、その時に付けた見出しは「『学校で目標を決める手間が省ける』って、何を考えているんだか・・・」。このことも含め、例によって評論などできないので、雑感を書くことにする。
 以下、ぼくの琴線に触れた記事本文は、□で表すことにする。

 「子どもの背筋がぴーん」「足裏がピタッ」「鉛筆の持ち方は親指より、人さし指が下になるように」・・・。岡山県教育委員会が「岡山型学習指導のスタンダード」で掲げる指導の基礎・基本だ。

 自慢ではないが、ぼく、鉛筆のみでなく、お箸だって「正しく」持つことができない。まあ、正しく持てるに越したことはないが、「基礎・基本」などと大仰に構えることではないと思う。

 「授業5(ファイブ)」として、「めあて(目標)を示す」「目標の達成度を確認する」など五つのポイントを掲げる。「聞き方、話し方の手本を示している」など24項目のチェックシートもつけた。

 ぼくも一応高校の数学の教員だけど、「今日は2次方程式の解の公式をやります」と最初に宣言することもあるし、何をやるのか説明などせずに授業を始めることもある。そんなの、その時々の授業で変わるに決まっている。こんなことをマニュアルにしてどうするの? しかも、24項目の(多い!)チェックシートまで作って。本当に、「何を考えているんだか・・・」。

 (岡山)県教委がスタンダードを作ったのは2014年。全国学力調査の成績がふるわなかったのが契機だ。

 これって、「学力調査」悪用の典型例だと思う。

 広島県東広島市は10年から教員と子どもに向け、「あいさつ」「へんじ」「ことばづかい」「はきものをそろえる」など規律のスタンダードを掲げ、標語コンクールも開いている。

 ぼく、けっこう「あいさつ」が好きで、廊下で生徒さんたちとすれ違う時、しっかりと「あいさつ」する教員だと思う。「コンチャ!」。生徒の多くは、元気に応えてくれる。別れる時は、「バイチャ!」。生徒の多くは、喜んでくれているようだ。
 同じく「ことばづかい」も大事だと、ぼくは思っている。廊下ですれ違う時、生徒たちは、「ティーティー」と声を掛けてくれる。最近はもう、「先生!」などとは呼ばれなくなってしまった。「それでいいじゃん!」と、ぼくは思う。

 教委のスタンダードには、若手を中心に歓迎する声が多い。「大阪の授業STANDARD」がある大阪府の新人の中学校教員(24)は「何が授業の要かがわかり、不安がなくなる」。「葛飾教師の授業スタンダード」をもつ東京都葛飾区の小学校教員(26)も「学校で目標を決める手間が省ける」という。

 最初に書いたように、「何を考えているんだか・・・」だよな〜。ぼく、たかだか「二流の教員」に過ぎないと思うけど、初任の頃、隣の教員と同じことをやるの、嫌だったけどな〜。「学校のことは学校が決めて、教育行政には介入させるな!」なんて考えは、21世紀の日本からは消えた?

 都内のある小学校は、教員版のスタンダードを作った。子どもたちに、授業のあいさつ後、先生の顔を2秒見るよう指導する▽「はい、〜です」の話形を徹底させる、などを盛り込んだ。「指導がばらばらにならないように話し合ってつくった」と生活指導担当の教員は言う。

 ぼく、2秒も顔を見つめられたら、照れくさくってしょうがない。それに、毎日接している生徒さん(高校の場合)たちと、「はい、〜です」なんて会話を交わすかな〜? ぼく、「指導」なんて言葉を滅多に使わんけど、「指導がばらばら」には悪意を感じる。「指導に遊びがある」なら、いい感じだと思うけど・・・。

 「『○○先生はいいといったのに』と言われないためにも欠かせない」と教員。別の教員も「保護者から苦情が来たら、『学校で決めています』と言える」と話す。

 この教員たち、「ちゃんと自分で考えろ」くらい、授業で言ってるだろうに・・・。

(17/11/05午前)

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千葉高教組第65次教育研究集会「平和人権民族」分科会のお知らせ

12/9(土)9:30〜12:00 於千葉県教育会館301号室

朝鮮学校無償化問題を考える
〜割れた地裁判決・原告の声・『共生』を探る〜

講師:長谷川和男さん(高校無償化からの朝鮮学校排除に反対する連絡会代表)
趙 誠泰さん(広島朝鮮学校卒原告、現千葉朝鮮初中級学校教員)     

 2010年民主党政権で始まった高校無償化制度は、中華学校やブラジル人学校など40余の外国人学校が対象であるにも関わらず、朝鮮学校だけは大延坪島砲撃事件を理由に適用が見送られ、第2次安倍内閣以後は「拉致問題など国民の理解が得られない」「朝鮮総連による不当な支配」を理由に対象から除外されました。その後、愛知・大阪・広島・福岡・東京の全国5カ所の朝鮮学校卒業生らが国の除外処分の取消を求める訴訟を起こし、今年夏、3つの地裁判決が出されました。7/19広島地裁と9/13東京地裁は不当判決、7/28大阪地裁では「除外は違法」とする勝利判決でした。
 また、都道府県や市町村の朝鮮学校への補助金交付も、2010年度以降14都府県で不交付(千葉県も2011年度から)となり、特に昨年3/29の文科省による「再考」通知後は不交付が拡大しています。千葉市も今年4/27に今まで続いてきた補助金交付の取り消しを発表しました。
 さらに、未だに続くヘイトスピーチデモ、小池都知事の関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典の追悼文の中止、先月の総選挙での安倍自民党による北朝鮮脅威=「国難」宣伝など、不当な差別やそれを煽る様々な出来事が朝鮮学校の生徒や関係者を苦しめています。
 千葉朝鮮初中級学校は今年、創立70周年を迎えます。千葉高教組もこれまで以上に連帯する必要があります。2014年県教研では、金有燮(キムユソプ)千葉朝鮮初中級学校校長に「千葉朝鮮初中級学校の今〜『ウリハッキョ』と『多文化共生社会』」のテーマで講演して頂きました。多文化共生社会を目指す日本や地域・私たちにとって朝鮮学校の存在は宝であり、「ウリハッキョ」の精神に私たち教員が学ぶべき点がたくさんあることを学習しました。
 今回は、朝鮮学校無償化訴訟の原告で現在千葉初中級学校教員の趙誠泰さん、訴訟を支援し全国の朝鮮学校を行脚する長谷川和男さんの話を伺います。「朝鮮学校とはどんな学校か?」「厳しい差別や・攻撃にさらされている生徒たちはどう感じているか?」「全国の朝鮮学校の状況は?」「『共生』社会への道筋は?」など、皆でこの問題を学び何が見えてくるか、話し合いましょう。日本の高校で、この問題が授業等でどう教えられているかについても交流したいと思います。多くの教職員や市民の参加をお待ちしています。

*問い合わせ先:石井 泉(天羽高校分会)

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