![]() 「安保法制の廃止を求める 6.12市川市民集会」(6.12 市川) |
最高裁決定、高校生向けビラまき、 参院選公示とイギリスのEU離脱など |
渡部秀清(千葉高退教) |
参院選の争点について 三題噺/民主主義・格差・原発 |
T.T.0544(千葉高教組市川 支部「ひょうたん島研究会」) |
(1)
さる5月31日、07年度の「君が代」処分で争っていた、河原井純子さん(停職3ヶ月)と根津公子さん(停職6か月)の取り消し訴訟は、最高裁が都教委の上告を棄却し、二人の勝訴が確定しました。都教委による加重処分が否定されました。これは画期的なことです。
なお、東京高裁判決(2015年5月28日)には次のようなことが述べられていました。
少し長くなりますが、紹介しておきます。
「本件根津停職処分において停職期間を6月とした都教委の判断は、具体的に行われた非違行為の内容や影響の程度等に鑑み、社会通念上、行為と処分との均衡を著しく失していて妥当性を欠くものであり、懲戒権者としての都教委に与えられている裁量権の合理的な範囲を逸脱してなされたものといわざるを得ず、違法なものというべきである。」 「機械的に一律にその処分を加重していくとすると、教職員は、2、3年間不起立を繰り返すだけで停職処分を受けることになってしまい、仮にその後にも不起立を繰り返すと、より長期間の停職処分を受け、ついには免職処分を受けることにならざるを得ない事態に至って、自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることになり、そのような事態は、もともとその者が地方公務員としての教職員という地位を自ら選択したものであることを考慮しても、日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながるものであり、相当ではないというべきである。」 「本件各処分によって控訴人らが被った精神的苦痛に対する慰謝料は、控訴人らそれぞれに対して10万円とするのが相当である。」 |
こうした高裁の判決が今回最高裁で確定したわけです。暴走する安倍政権下、二人は屈することなく闘って情勢を切り開きました。河原井さん・根津さん、おめでとう! そして、ありがとう!
(2)
6月18日(土)、「産経新聞」に以下のような記事が載りました。
<校門前でビラ、署名…公選法すり抜け 狙われる子供たち> 【18歳選挙権】 新たに有権者となる18歳の高校生を狙い、校門前で政治的な主張を含むビラを生徒に手渡すなどの活動が相次いでいる。ただ、特定の候補者への投票を呼び掛けていないため公職選挙法が禁じる事前運動に当たらず、学校の敷地外でもあるため、学校側が中止要請するのは難しいのが実情だ。 東京都内では5月下旬頃から、複数の都立高校の校門前などで、18歳になった高校生が選挙権を行使できることなどを記述したビラが生徒に配られた。 ある高校では、通行の邪魔になるとの理由で教員が配布をやめるよう要請。「誰が制作したか分からない。学校が配っていると勘違いされる」と困惑する。 千葉県では安全保障関連法に反対する団体が昨年12月、県立高校の校門前で、生徒らに同法の賛否を尋ねるアンケートを実施し、回答結果を反対の署名用紙とともに近隣に配布。学校側は「学校全体で取り組んだと誤解されかねない」としてこの団体に抗議した。 学校には教育基本法で政治的中立性の確保が求められるが、学校周辺で民間団体などが行うビラ配りなどは制限できない。元参院議員で教育評論家の小林正氏は「校門前といえども生徒が通う場所であり、生徒に影響を与える行為には教育的配慮をすべき。校外でも教育委員会が対応するのは必要な措置だ」と話した。 |
この記事は、彼らが生徒たちの知る権利を妨害しつつ、生徒たちが政権に反対の政治的見解を知ることを恐れ、「校門前での言論を抑圧しろ」と教育委員会や学校に圧力をかけているものです。
しかし、「産経新聞」はこの記事で逆に私たちのビラまきとその正当性を宣伝してくれています。教育委員会や学校には、「右翼的な産経新聞の圧力・脅しに屈するな」と言いたいものです。なお、高校生ビラまきはその後も行われています。
ところで、この記事の前の6月15日、千葉県議会文教常任委員会が開かれました。以下はそれを傍聴された方のメールからです。
右派議員たちの関心は市民や教員の政治活動にしかない。学校名などをあげての攻撃の激しさ。現職なら懲戒免職だとか、退職金を返還させろと処分、処分と騒ぎ立てる。松戸の校門前チラシまき禁止しろなどなど、今日の文教委はそれが主題のような騒ぎでした。 教育庁も曖昧な逃げ腰に終始、岡田議員(共産党)は「公道での政治活動の自由」をみとめさせました。しかし、右派の暴論はともかく市民の側も注意が必要でしょう。 岡田議員が、「実教採択妨害をやめよ」と要求、教育庁は「まだきまっていない」、 教科書採択の公開については「次回までに検討をすすめる」。おかしかったのは、 岡田議員が「教員の地位に関する勧告」についてただした時、 新指導課長は知らなかったらしく、大慌てで書物をめくっていた姿でした。 岡田議員は、主権者教育について、教員の政治活動について、政治的活動の自由と政治的中立性とを混同するなとたしなめていました。無智と暴力の集団のなかで唯一に光る存在のようです。 |
千葉県議会の反動的性格がよくわかると思います。また、右翼議員と「産経新聞」との結びつきも。
(3)
6月15日、政治資金の公私混同などの問題で舛添都知事が辞任しました。この間の都民の声が舛添を辞任に追いやったのです。安倍政権も、自らの支持率に跳ね返るとばかりに、舛添を切らざるを得ませんでした。いかに世論の力が大きいかです。
6月22日、参院選が公示され、7月10日投開票となりました。安倍政権は、今秋の景気対策の柱として、財政投融資を積極活用する方針を打ち出しました。またしても金のばらまきです。そして、安倍首相は「改憲」の意図を隠し、さかんに「今回の争点は経済だ」と述べています。
ところが6月24日、イギリスの国民投票で、EU(欧州連合)からの離脱派が勝利しました。その背景にあるのは、国際資本(多国籍企業)によるイギリスの政治・経済への支配と、それによる貧富の差の拡大・移民の流入などへの反発があったと思われます(移民の流入は、国際資本にとっては安い労働力の供給となるのですが、多くのイギリス人労働者にとっては低賃金・失業につながります)。この結果を受け、世界中で国際資本の利益の基準ともなる株価が暴落しました。なかでも、イギリスに大量に資本投下していた日本企業の株は暴落しました。その結果、「争点は経済」という安倍政権にとって、その「経済」が危うくなってきました。(ただ、EUからのイギリスの離脱は、国際的には排外主義をあおる右翼的潮流が台頭してくる危険性もあり、国際的な対立も激化していくと思われます。)
一方、この1年余りにわたる市民運動の発展によって生まれた「野党共闘」は、「戦争法廃止」「安倍政権打倒」などを掲げ、参院選1人区32で統一候補を擁立し、7月14日公示の都知事選でも連携していくことを確認しました。これに対して、いろいろなことが言われていますが、これが現段階での日本での人民運動の到達点であることは間違いないと思います。あとは、私たちの大衆と結びついた粘り強い運動が求められているのだと思います。
(追)
[1]「週刊少年サンデー」(高校生以上の読者が6割という)に、4月27日発売の22・23合併号から、『あおざくら 防衛大学校物語』(二階堂ヒカル)という連載が始まりました。そこには「この物語は国の防衛を志した若者たちの青春の物語・・」と述べられています。まさに戦前の繰り返しであり、現代版「国策マンガ」としかいいようがありません。
[2] <自由と平和のための京大有志の会>が作った2分半程度のビデオクリップがインターネットで見られます。「今こそ、1年前のあの暑い夏を思い起こすとき」として作られたものです。
《あしたのための声明書》(2016年6月22日)
http://www.kyotounivfreedom.com/news/manifestofortomorrow_video/
これを書いている今が6月26日(日)の未明4時で、この雑文が掲載されるはずの『ひのきみ通信』が発行されるのが7月2日(土)。そして、我がニッポンの命運を決めるかもしれない参院選の投開票が7月10日(日)。ぼくが今回の参院選の争点と考える3つの話を、書くことにする。
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公示翌日の6月23日(木)、『朝日』7面に、参院選に関する「朝日・東大(谷口研究室)共同調査」を報じた全面記事が載った。その長〜い記事に一度も登場しない4文字熟語がある。
それは、「民主主義」。
所詮「比較多数」でしかないのに国会では「圧倒的多数」を握っている──それを使えば何をやってもいいと勘違いしているらしい安倍自公独裁政権。それを続けるかどうかが、今回の参院選の最大の争点だと思う。それに比べれば、「民共」の違いなど、ビートルズとストーンズの違いくらいでしかない──かなり違うような気もするが・・・。
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公示前日の6月21日(火)の『朝日』経済面で、政治家ではないが日銀総裁の黒田東彦(はるひこ)の発言が紹介されている。
日本銀行の黒田東彦総裁は(6月)20日、東京都港区の慶応大学での講演後の質疑応答で、「日本で所得格差は拡大していない」と述べた。大規模な金融緩和で富裕層の資産価値が膨らむ一方、労働者の賃金は伸びていないと学生から指摘され、反論したものだ。 |
6月23日(木)、同じ『朝日』の経済面に、「鴻海(ホンハイ)、シャープ7000人削減示唆/傘下入り前提崩れる」という記事が載った。その中の次の記述。
(鴻海)会長は「日本式のやりかたは、会社にとって利益がないと判断したらきっぱりカットしたい」と述べた。「場所を替えても飼い主を替えても悪い卵しか産まない鳥はいらない。シャープは残そうとするが、カットすべき人はカットする」としている。 |
差別的なヤツだと思う。コピペしてるだけで、ムカツイテくる。この会長サンは、次のようにも言っている。
個人ごとの業績を評価し、信賞必罰の制度を採り入れる。 |
話の本題(参院選)からは逸れるが、「信賞必罰(業績評価)」と「削減(首切り)」は同時にやってくる──ということは、覚えておいたほうがいいと思う──閑話(ではないが)休題。
この「鴻海」記事の横に、「役員報酬、過去最高/日産ゴーン氏10億円超・日立ドメ氏は9億円」という記事が載っていた。
「報酬10(9)億円」と「7000人削減」──この違い、東(はる)ちゃん、どう見る?これでも、「日本で所得格差は拡大していない」と言い張るつもり?
「格差と貧困」問題も、今回の参院選の争点だと思う。
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自慢ではないが、日本からほとんど出たことがないので、外国のことは、よく知らない。でも、カリフォルニア州のことは知っている。今は昔、ママス&パパスの『夢のカリフォルニア』とか、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』とかを、よく聴いたからだ──アメリカのどっち側にあるかは知らないが。
そのカリフォルニアが、「州内の最後の原発を止める」みたいなベタ記事を、最近の『朝日』で読んだ。記事の現物を探したけど見つからないのだが、記事を読んだ時に上の2曲を思い出したので、カリフォルニア州で間違いないと思う。
その原発、安倍政権、40年超も含めた再稼働をなし崩し的に進めようとしている。『夢のカリフォルニア』ならぬ『悪夢のニッポン』になるようで、怖い!
原発問題も、大事な争点だと思う。
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・・・ということで、「民主主義」「格差と貧困」「原発」について誰がまともかを考えた上で、『予想紙』を赤ペン耳に読みながら、7月10日(日)は競馬場に──じゃなかった投票所に向かおうと考えている(T_T)である。
あ、「馬券」って正確には、「勝馬投票券」って言うんだよね!
(16/06/26早朝)