ひのきみ通信 第133号

2007年8月24日


目次

参院選における安倍政権の惨敗と
 大衆闘争の重要性について
渡部秀清(船橋東高校分会)
2007年夏 沖縄
 参院選・普天間アセス・教科書検定問題
石井 泉(市原高校分会)
二人の元教員対談:本多負一×原呪雄
 自主研修による授業こそ教育だと確認
(T_T)0396(『週刊毎日が日曜日』編集委員)
バラナシの駅で考えた 「インド化」する日本 近 正美:生浜高校分会
お知らせ

バックナンバー一覧へ戻る
トップページへ戻る


参院選における安倍政権の惨敗と
大衆闘争の重要性について

渡部秀清(船橋東高校分会)

 7月29日に行われた参院選で安倍政権は歴史的な惨敗をしました。
 改選議席と新たな獲得議席は、自民党64⇒37、公明党12⇒8、民主党32⇒60、共産党5⇒3、社民党3⇒2です。
 安倍政権を支える自民党、公明党の大敗北です。参院で自民党が80議席台に落ち込んだのは、結党(1955年)以来はじめてのことです。
 私たちは、これまで国会前での闘い、職場での教職員の意識などを通して、一貫して、国会は民意を反映していない、民意から遊離していると考えてきました。
 今回の惨敗は明らかに、強引な政治手法で暴走する安倍政権に対する民意による強烈な「不信任」以外の何物でもありません。その民意とは、この間の小泉・安倍による構造改革路線で生活基盤が切り捨てられる一方負担増を強いられてきた労働者(パート、アルバイト、派遣労働者なども)の怒りであり、ワーキングプアとも言われる若者の怒りであり、勤労市民の怒りであり、知識人の怒りであり、農民漁民たちの怒りでした。つまり、国民の大多数の怒りでした。
 そのことは、選挙期間中に、自民党内からも安倍政権に対し批判が噴き出したことにも現れています。例えば、参院選高知選挙区で3選をめざす自民党現職だった田村公平氏は、高知市内で開いた演説会で、安倍首相が掲げる「美しい国」に対し、「意味がよく分からない。高知は明日の飯をどうやって食うかという追いつめられた状況にある。絵に描いた『美しい国、日本』で応援に来られて適当なことばかり言われたら、馬鹿にされたような気がする」と痛烈に批判したのです。
 しかも「明日の飯をどうやって食うかという追いつめられた状況にある」のは、決して高知県民だけの話ではなくなってきているのです。
 しかし、「今回の選挙は民主党の小沢さんと私とどちらが首相としてふさわしいかを選ぶ選挙だ」とまで言っていた安倍首相は、結果が出たにもかかわらず、すぐ続投を表明しました。しかも、中川幹事長や青木参議員会長が辞任するにもかかわらずです。「最高責任者」と称する自分だけは残ろうというのです。見苦しい、恥知らずとしか言いようがありません。
 これによって、安倍政権に対する風当たりは、今後さらに強まるでしょう。
 ところで、今回、安倍政権に対する怒りの票が民主党へ流れたことにより、共産や社民はあおりを受けて議席数を減らしました。しかしそれでも、民意の流れは、共産や社民が主張している<安倍政権打倒!>の方に大きく流れ出したことには変わりはありません。
 その流れに押されて、すでに安倍首相の足元からも地方からも、安倍首相の辞任を求める声が公然と上がっています。そしてこの流れは、安倍首相が首相でいる限り、ますます強まるでしょう。
 今や情勢は選挙によって大きく変わりつつあります。安倍首相は低姿勢となり、「戦後レジームからの脱却」や「美しい国」といったスローガンを声高に言うことも出来なくなりました。また、選挙後に開かれた臨時国会では「憲法審査会」も立ち上げることは出来ませんでした。また秋の国会での「テロ特措法」延長も難しくなってきました。(あせったアメリカは、脅しすかしの手を使ってきています。)
 さらに、敗戦62周年の8月15日、安倍首相は、靖国神社への参拝をすることが出来ず、閣僚も一人(その日の午前中まで「静かに社頭で祈りをささげられる状況じゃない」としていた高市内閣特命相が、靖国神社周辺の様子を見てなのか、午後に急遽、安倍内閣の面子を保つため(?)、こそ泥のように参拝しました)を除いて参拝することができませんでした。
 そして安倍首相は、全国戦没者追悼式典では、「アジア諸国の人々に対して・・・深い反省とともに、犠牲となった方々に謹んで哀悼の意を表します。・・・・・戦争の反省を踏まえ、不戦の誓いを堅持し、・・・」などと述べざるを得なかったのです。
 また、安倍首相は盆も休まず出勤していたようですが、それでも彼の求心力の低下はとまりません。首相に近い議員の一人は、「調子が上向きならどんどん人が集まるが、最近の<首相動静>欄は短い。今はだれも総理に近づこうとしない」(8月14『朝日』)とまで言っています。
 「戦後レジームからの脱却」と「美しい国」を唱えた安倍首相は今、滑稽なまでに裸の王様になりつつあると言えるでしょう(日本経団連は支持していますが)。
 しかし、安倍政権は待ってれば倒れるというようなことはありません。彼は「私の国づくりは始まったばかりだ」と言っています。また、彼は急に低姿勢になりましたが、それにごまかされてもなりません。元気になると彼はもっと悪いことをやるのです。「水に落ちた犬を撃て!」これが私たちの合言葉です。今こそ、職場・地域を基礎にした大衆闘争の発展が何よりも求められていると言ってよいでしょう。
 私たちは、かつて1960年に日本の人々が、彼の祖父の岸政権を大衆闘争で倒したように、大衆闘争で安倍政権を倒し、日本の人々を貧困と侵略戦争に導こうとしている「戦後レジームからの脱却」と「美しい国、日本」にトドメを刺しましょう!

*************************************

 ところで、安倍首相の「教育再生」の先兵の役割を果たしてきているのが、石原・都教委です。その東京でこの夏、大衆行動『8・27都教委包囲アクション』が以下の要領で行われます。今日の東京は明日の千葉、日本です。是非多数ご参加下さい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<名称> 『8・27都教委包囲アクション』
<イメージ> 教育基本法改悪、教育三法改悪を先行実施している都教委の暴走をとめるために、都教委にモノを申したい多くの団体・個人で一緒に都教委を包囲し、「要請文」を持って押しかけ、要請・抗議する。
<主催> 8・27都教委包囲アクション実行委員会
<日時> 2007年8月27日(月) 16時〜18時(雨天決行)
<場所> 都庁第二庁舎前(横断幕、旗など多数持ち寄る)
<内容> ・都庁前抗議の座り込み
・都教委への大「要請団」(各団体・個人からなる)派遣
・各個人・団体からの発言
・要請行動報告
<前段行動として> 13時30分〜15時30分、街宣車4台で新宿駅周辺で街宣行動
<後段集会として> 18時30分〜20時、近くの集会場での集会と決議採択
<賛同を募っています>
個人1口、1000円 団体1口2000円
 (郵便振込先) 00100−2ー611187 「都教委包囲ネット」
*その際、名前の公表の「可」・「否」を記入して下さい。
<連絡先> 090−5415−9194
なお、「8・27都教委包囲アクション」の際の要請団体として、現時点で確認されているのは以下の通りです。
(予防訴訟の会)、(被処分者の会)、(被解雇者の会)、(河原井・根津さんを解雇させない会)、(学校ユニオン)、(中島裁判)、(八王子夜間中学の教員)、(都教委包囲首都圏ネットワーク)、(障がい者団体)
また、都庁前アクション・後段集会での発言予定は、要請団体にプラスして、
・大内裕和さん、・一坪反戦地主、・杉並の教育について、・不採用者の会、・東京都の教科書採択について、・藤田先生を応援する会、・ブラウス裁判の会
などです。

目次へ戻る


2007年夏 沖縄

参院選・普天間アセス・教科書検定問題

石井 泉(市原高校分会)

 先月29日に実施された参議院選挙の結果の中で、沖縄では山内徳信氏(比例代表社民党)と糸数慶子氏(沖縄選挙区無所属)の読谷高校師弟当選が話題となった。共に、「名護市辺野古への新基地建設反対」及び「高校歴史教科書検定意見の撤回」の二点を強く訴えての当選である。沖縄で、現在、この二つの問題に関して次々と新しい動きがあり、県民の強い不満・怒りが高まっていることに、本土の私達も目を向けなければならない。私が購読している新聞・琉球新報で知る範囲であるが、最近の主な動きを紹介したい。

[普天間飛行場移設問題の関連]
2007.7/ 3  防衛施設局は北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区へのヘリ着陸帯(ヘリ パッド)移設工事を、反対住民の抗議・座り込みが続く中、強行開始。
 嘉手納基地で5月に起きたジェット燃料漏れ事故で、県・防衛施設局職員が2度目の現場立ち入り。しかし、米軍は再び土壌採取など県の調査を拒否。
7/ 4  高市沖縄北方担当相は、北部市町村が求めている振興策継続は「あくまでも普天間移設についての協議が進むこと」が条件との見解を述べる。
7/ 9  北部訓練場で1961~62年に枯れ葉剤を散布する作業に関わった元米兵のがん補償を認めた米文書発覚。ダイオキシン残留の可能性。政府は調査を拒否。
7/18  県立沖縄高等養護学校に米軍装甲車が無断侵入。陸上部生徒が練習中のコース上でUターン。抗議後も8/7県立前原高校に米軍車両が再び侵入。
7/21  名護市辺野古の環境現況調査(事前調査、5月に自衛隊掃海母艦ぶんごが周辺に停泊する中、強行開始))に反対する平和市民連絡会の平良夏芽牧師が海中での抗議行動中、もみあいとなり酸素バルブが閉められたと抗議。現場映像も公開。反対派住民らの座り込みは3年目となり今も続いている。
8/ 1  県警は2004年8/13米軍ヘリ沖国大墜落事故の原因をつくった整備兵4人を 氏名年齢不詳(米軍が地位協定を楯に拒否)のまま時効直前に書類送検(現場・機体検証も拒否)。8/10、両政府は普天間ヘリ飛行経路を沖国大から琉大上空としただけの変更案を承認。整備兵の不起訴決定。書類送検に対し、在沖米総領事は「公務中の事故で裁判権は米側にあり、米側調査で事故原因は分かっている。整備兵の名前を聞き、何を調査したいのか疑問」と発言。
8/ 7  政府は県・名護市・宜野座村に普天間移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を提出。新基地建設への手続きを強行開始。県らは受け取りを保留し、移設措置協議会への不参加も表明。方法書では具体的機種を明示せず。
8/10  防衛施設庁と外務省職員が金武町長に、米軍基地キャンプ・ハンセン内に新たな実弾射撃場建設の計画を伝える。地元は負担増に反対。
8/14  政府は普天間アセスの公告縦覧強行。県や市は縦覧場所の提供に協力せず、地元同意ないまま、手続きをどんどん進める。

 いずれも、共通するのは「米軍・日本政府」による「沖縄県民」への負担や被害の押しつけという構図である。日本政府のアメリカへの卑屈さが際立ち、政府にとって沖縄県民よりもずっとアメリカが大切という姿勢が明白である。日本はアメリカの半植民地状態か。

[沖縄戦での「集団自決」記述に関わる教科書検定問題の関連]
2007.3/30  高校教科書の検定結果が公表。文科省が「集団自決」は軍の命令や強制であったという記述に意見をつけ、それらの記述が削除・修正され「集団自決」への軍の関与が曖昧にされる。検定意見の理由の一つに岩波「集団自決」訴訟(05.8/5元部隊長が隊長命令の存在を否定し提訴)を持ち出す。以後、県内の全市町村議会で検定意見撤回・記述回復を求める意見書が可決される。
6/ 9  「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」を県民広場で教員や高校生・戦争体験者ら3500人の参加で開催。
6/22  沖縄県議会が検定意見の撤回と記述回復を求める意見書を全会一致で可決。
7/ 4  副知事らによる県民代表要請団が文科省に検定意見の撤回を強く要請。しかし、「教科用図書検定調査会が決定すること」と解答するだけで撤回を拒否。
7/11  県議会で意見書を再可決。同一例会中に2度の意見を可決するのは初で異例。政府は「軍関与がなかったと誤解されるおそれない」との見解示す。また、検定意見は岩波「集団自決」裁判提起を直接の根拠としていないと否定。
7/28  岩波「集団自決」訴訟での証人喚問で著者の宮城氏が軍命の存在を示す証言を例証し軍関与を指摘。
8/16  「教科書検定意見撤回を求める」沖縄県民大会の実行委員会が発足し、県民大会を9/23に平和祈念公園で5万人規模で開催することが決定。実行委員長は県議会議長で知事も出席予定。

 この問題については雑誌『世界』7月号での特集、石原昌家氏・高橋哲也氏・目取真俊氏らの分析が勉強になる。政府の狙いは、沖縄戦で県民が得た教訓「軍隊は住民を守るどころか、軍事優先の結果、住民を直接殺害したり死に追い込んだりする」を覆し、「沖縄戦では軍民が一体となって戦闘に参加し、親子でさえ国に殉じて自ら死を選んだ」という「殉国美談」「崇高な自己犠牲の精神」思想の浸透であると指摘。すでに1983年検定の「集団自決書き加え」事件(第3次家永訴訟)当時から、政府は「集団自決」に注目し、歪曲・利用を試みていた事実。家永訴訟中、政府側証人の「集団自決は日本軍の命令や強制によって親子・友人・知人が殺し合ったというのは、死んだ人には大変失礼だ、その行為は尊敬死である」という旨の証言も指摘している。

 7/25琉球新報に大田昌秀参院議員政界引退インタビューが掲載された。大田氏は、次のような点を述べた。「有事法制、国民保護法、教育基本法改正、国民投票法など基地を抱える沖縄にとって到底納得できない法律が次々とできた。憲法は危険な状況に陥っている」「今の政権は元の教育勅語に基づく教育体制に戻そうとしている。愛国心を植え付けるために日本軍をおとしめるような記述は排除する」「(印象に残っていることは)国会議員があまりに沖縄をしらなさすぎることに失望した。日米安保条約は重要と言いながら誰も自分のところに基地を持ってこようとしない」。特に最後の言葉は、国会議員だけの問題ではない。私達も県民の苦しみ・悩みを自分のこととし共有しなくてはならない。

目次へ戻る


二人の元教員対談:本多負一×原呪雄
自主研修による授業こそ教育だと確認

(T_T)0396(『週刊毎日が日曜日』編集委員)

 この対談は、8月某日、我が『週刊毎日が日曜日』の編集部で行われたものである。
 なお、本誌と名称が似ている『週刊金曜日07/06/29号』の「貧困なる精神」欄の「元新聞記者対談:本多勝一×原寿雄」とは、あちらが「ジャーナリズム論」でこちらは「教育論」とテーマも違うくらいだから、一切関係はない。万一似ているところがあったとしても、それは完全に「偶然の一致」である。誤解のないよう、お願いする。(T_T)
 
呪雄  自主研修による授業というのは、金かけて、時間かけて、みんなで協力してやっても、結果として成果が生まれるときと、期待に沿ったような成果を得られないときがある。
負一  それは当然ね。
呪雄  ところが今は、あまり無駄なことはしたくないみたいな空気が強いじゃない。
負一  う〜ん。金のせいですか。
呪雄  やっぱりそういう経営効率主義の精神だと思うんだ。
負一  現場の教員はそこまで考えてのことかなあ。
呪雄  それと自主研修による授業はすべて自分で責任を取る。教員あるいはその学校が責任を取ることになるから、それには相当覚悟が要るね。覚悟なしに教育活動はできない。安倍政権下でますますその情勢は厳しい。
負一  うん。それも当然ですよね。
呪雄  まず自分たちが置かれた環境、情勢をきちんと認識しなければ始まらない。安易に傾く言われたままの教育を問い直せば、自主研修による授業こそ教育だということが確認できるはず。続発する学校不祥事のたびに教育者はいなかったのかと嘆かわしい。
負一  それもだけれど、もっと単純な意味で、学校で働いている教員たちは、それで面白いんだろうかと、言われたままの教育をやっていて。そこが不思議な気がする。
呪雄  まったくだね。教員は面白がってなったはずなのに、今のような教員生活に甘んじていて、毎日がホントに生きがいを感じられるのか、って言いたくなる。
負一  そうでしょう。そういう単純な意味で不思議な気がするわけ。
呪雄  個々の教員は、もっと面白くて生きがいのある、教員としての毎日を生きたいと思っている。
負一  だったら教員自身がそのようにやればいいじゃない。結局は教員をめざした動機が不純なのではないかと疑いたくなる。
 
【自由な職場づくりから】
呪雄  だから管理職が教員にその余裕を与えていないということでしょう。意欲が出るような職場環境をどう作るか、ではないか。いい授業をするために、自由な論議ができる職場環境づくりが教育活動の第一歩だ、というのは僕の持論です。教員としての意欲もない奴が教育界にのさばっているのは迷惑だね。
負一  俺もそうじゃないかと思ったんだけれど、現役の中でも定年に近いある教員の話だと、それが案外そうじゃないって言うんですよ。若い教員連中はそもそもそういう関心を持たないんだって。上からの抑圧とかというものでそうなっているんじゃないって言うんです。
呪雄  本人の気分かね。
負一  もう何というか、上も下もそういうふうになっているって言うんだ。だから初めからそういう希望を持って教員になった若者は、2〜3年以内に辞めてしまう。辞める数が非常に多いって言うんですよ。
呪雄  しかし、自ら学校を辞めていくっていうのは、何か意欲があるから辞めるんでしょう。
負一  たぶん、そうでしょうね。
呪雄  辞めない場合は、そこそこ給料ももらって適当にやっていれば、定年までのんきに過ごせる。そういう連中が多くなったかね。そんなのんきな時代じゃないと思うがね・・・。
負一  というふうにも見えますね、表面的には。深層まで調べたわけじゃないけれど。
呪雄  一般の会社だったら、それも理解できるけど、狭き門を入った教員連中も、そういうふうになるかね。
負一  というふうに、その定年に近い教員が言うんですよ。だからああいう教育なのかなと思えてしまう。
呪雄  それだと官製研修へ行ってもらった資料を使い、言われたままの授業をすれば、「きょうの仕事は終わった」ってなっちゃう。それじゃ面白くないだろうに−。
負一  そんなことで面白いハズがない。俺も官製研修に行ったけど、つまらんから昼寝していた(笑)。授業も好き勝手やって、生徒と遊んでたようなもんだ。
呪雄  面白くなくても、我慢しちゃっているのかね。
負一  それと一種あきらめというのか。惰性化もするし。(対談終了)

目次へ戻る


バラナシの駅で考えた 「インド化」する日本

近 正美:生浜高校分会

 8月8日から1週間、インドのフィールドワークに行ってきた。デリーからコルカタ、バラナシ、アグラ、と飛行機、鉄道、バスで回った。
 わたしの問題意識は「現在のインド」にあるのだが、バラナシ郊外のムガル・サライ駅でアグラ行きの列車の到着が遅れて5時間待つことになった。その5時間の間、ホームに立ち続けてそこに蠢く人々の様子を見つめていた。インドに行くと人生観が変わると言われるが、インドに行かないとインドは見えてこないことがあるのだと、ホームに5時間立っていて感じた。
 それは、そこに多くの子どもたちが働いていたことだ。この日は平日でインドでは普通に学校がある日である。朝、制服を着た子どもたちが親と一緒に通学していく風景をホテルから出て目にしている。しかし、駅では多くの子どもたちが働いている。子どもたちは、ゴミを広い、掃除をして、その合間に「乞食」活動を展開するのである。
 わたしたちが昼食で食べた弁当ガラを集めては、その中の食べ残しを目の色を変えて貪っている。ホーム下の線路を歩きながらペットボトルを拾い集めて「親方」らしきおじさんに手渡している。掃除の仕方が悪いと駅員から怒鳴られている。拾ったジュースを二人の男の子が分け合って飲んでいる。少女がわたしの前に来て、自分の口の前で手をひらひらと動かした後、掌を上にしてもの欲しそうに視線を投げかけてくる。この子どもたちは、きっと「お掃除」カースト(厳密にはジャーティか?)に属していて、駅を掃除することによって、ゴミの中から食料を得たり、ペットボトルを拾ったり、物もらいをする「権利」が保障されているようだ。そして、インドの人たちはそういう子どもたちがいることは当たり前で何の不思議でもなんでもない素振りである。
 アグラで宿泊したホテルの前で、街並みを見つめて立っていると何か話しかけてきたインド人がいた。英語は苦手なのでうまいコミュニケーションは取れないのだが、どうも「お前は何をやってるんだ?」と聞かれたようなので「リアルなインドを見ているんだ」と答えると、足下の砂を少しつまんで、わたしの目の前にもってきて「これがインドか?」と言うので「そうだ」と答えると、彼は自分の脇にいた赤ん坊を連れた「乞食」の女性を指差して「こいつはインドではないぞ」と言う。わたしは「彼女こそリアル・インドだ」と言うと妙な顔をしてどこかへ行ってしまった。
 インド人にとってカーストはインドで生きるときの大前提である。インド憲法は「カーストによる差別を禁止」しているが、「カースト」はインドそのものとして存在する。カースト制度を否定することは、日本で「天皇制」廃止を言う以上に難しいことのようだ。インドでは4割の国民が非識字である。世界最大の民主主義国で、義務教育が制度化されているにもかかわらず多くの子どもたちが教育を受ける機会を奪われている。
 しかし、日本も似たり寄ったり。格差が固定化し、親から子へと貧困が世襲されていく日本。まさに、日本の未来がインドに見えた。この時代の最先端をある意味で歩いているのがインドかもしれない。新たな「カースト社会」が日本にいま誕生している。その社会の中で上位「カースト」の利益を守るということが、小泉が進めた新・自由主義である。まさに、D.ハーベイが言う福祉と教育の切捨て、特権階級の権益保持、組合などの対抗(抵抗)勢力の解体…、そんな社会が現実となっている。8月15日…、帰ってきた日本は、インドより暑かった。

目次へ戻る


お知らせ

8月25日(土) 13:00〜 立川・反戦ビラ弾圧・無罪署名集め JR八王子北口コンコース
8月25日(土) 13:15〜 教育問題リレー討論「雇用不安社会を生き抜く」
 攝津正(非正規労働者のネットワーク)
亀有地区センター
 (亀有南口2分イトーヨーカドー7F)
8月26日(日)   「六ヶ所ラプソディー」千葉上映会 10:00-,13:30- 千葉市生涯学習センター(JR千葉北口)
8月26日(日) 13:00〜 現教研まつど「母親と教師の語る会」 ゆうまつど(松戸西口5分)
8月26日(日) 17:00〜 ミュージカル「はだしのゲン」 佐倉市民音楽ホール(京成臼井7分)
8月27日(月) 16:00〜 東京都庁包囲Action 都庁前集合
9月1日(土)
 〜2日(日)
13:00〜
〜15:00
第49回自治体学校inかながわ 鶴見会館(全体会)
9月1日(土) 14:00〜 「現代の理論」読者交流会 西野瑠美子
 『慰安婦』問題の謝罪への抵抗-過去は、いかに、なぜ克服するのか
専修大学神田キャンパス
 7号館(大学院棟)6F764号室
9月1日(土) 18:30〜 「こころの自由裁判」提訴2周年 伊藤真さん講演会 横浜市開港記念会館
9月2日(日)   「日本の青空」上映会 10:30-,14:00- 市川市民会館(JR本八幡,京成八幡)
9月3日(月) 10:45〜 教科書配布裁判第3回公判 10:45抽選 横浜地裁502(JR関内8分)
9月3日(月)
 〜16日(日)
11:00〜
〜21:00
横浜国際フォトジャーナリズムフェスティバル「地球の上に生きる」 横浜赤レンガ倉庫1号館2Fスペース
 (みなとみらい線日本大通り12分)
9月7日(金) 18:30〜 憲法20条が危ない!緊急京都集会
 「憲法改悪と政教分離の危機」 菅原龍憲
大谷婦人会館
 (JR京都北口10分:地下鉄五条2分)
9月8日(土)
 〜
  「オフサイドガールズ」上映 シネマックス千葉
 (JR千葉,京成千葉中央7分)
9月8日(土) 13:00〜 ピース・フェスティバルCHIBA(大人2000円・小中高校生は無料)
 「これからの子どもと日本の未来はどうなるの?」尾木直樹
千葉市民会館大ホール
9月8日(土) 18:00〜 平和演芸会 三遊亭天どん・岡本宮之助 麻布区民ホール
9月9日(日) 13:30〜 学習会「障害児の高校進学 これまでとこれから」
 報告:北村小夜&神奈川県・埼玉県
千葉市生涯学習センター3F研修室3
 (JR千葉北口8分:千葉市中央図書館)
9月15日(土) 13:00〜 シンポジウム「東大闘争と9条改憲反対運動
 塩川貴信・尾花清・加藤節・大窪一志・朝日健太郎・河内謙策
全水道会館5F(水道橋東口3分)
9月15日(土) 13:00〜 「ひめゆり」上映会 神奈川公会堂ホール(JR東神奈川5分)
9月15日(土) 14:00〜 公開学習会「天皇制国家とメディア」 日本基督教団紅葉坂教会(JR桜木町)
9月15日(土) 17:00〜 三宅晶子さんによる「母‐おふくろ」にむけての学習会
 要問合Fax:03-3920-4433
ブレヒトの芝居小屋
 (西武新宿線武蔵関北口7分)
9月18日(火) 19:00〜 「ひめゆり」上映会 かつしかシンフォーヒルズ
 アイリスホール(青砥5分)
9月20日(木) 14:00〜 予防訴訟控訴審第2回口頭弁論(抽選あり30分前集合) 東京高裁101
9月22日(土)
 〜23日(日)
  たんぽぽ舎「浜岡原発ツアー」 問合・申込Fax:03-3238-9035  
9月26日(水) 10:00〜 特別支援教育を考える学習会
 「わたしたちが望む『普通学級における支援』を考える」佐藤陽一
千葉市民活動センター会議室
 (千葉中央コミュニティセンター1F)
9月29日(土) 14:00〜 「集団自決」検定問題を検証する 石山久男 横浜市技能文化会館802
9月30日(日) 13:15〜 教育問題リレー討論 雨宮処凛 金町地区センター4F(金町3分)
9月30日(日) 13:30〜 東海村臨界事故を忘れない・8周年東京圏集会 全逓会館(JR水道橋西口2分)
9月30日(日) 14:00〜 連続セミナー:聞く・知る・学ぶ《韓国・朝鮮人元BC級戦犯問題》4
 映像で考える… 桜井均(元NHKプロデューサー)
韓国中央会館別館(地下鉄麻布十番)

目次へ戻る
バックナンバー一覧へ戻る
トップページへ戻る