ひのきみ通信 第51号

2000年7月16日

─踏みにじられた「在日」の願い─
『諸先生へ(手紙)』 1987年 朴実(パクシル)
「昨日の卒業式において…『君が代』演奏が強行され私達親子3人は心ならずも退席せざるをえませんでした。…今後先生方にお願いしたいことは、あのような形で退席せざるを得なかった私達の気持ち、とりわけ…お世話になる幸子(ヘンジャ)が流した涙を受け止めて欲しいのです。『君が代』が流れた時、心が痛み、傷つき、悲しむ人達が大勢いることを。『君が代』の果たしてきた歴史を、今日もそれを背負っている子供達の存在を。…」
(『週刊金曜日5/26号』田中伸尚著「ダブル」より)

目次

「花は土地に咲く」平和サミットに参加して ひのきみ特派員A
今何が大切か 大野 昭之(元東京都町田市立木曽中学校長)
戦後の「日の丸」との出会い 梅 靖三
ひのきみと自然の終焉 桜沢 敏夫(船橋東郵便局職員)
「われら新国民」マークの提案 stylo rouge
『ひのきみ通信』50号記念特集
     「ひのきみ通信」50号おめでとう 中村 美彦(市原緑高校分会)
     『ひのきみ通信』発行50号に寄せて 小幡 勉(京葉工業高校分会)
     フェミニズムの視点から? 佐久間 美弥子(千葉工業高校分会)
千葉県議会での歴史教科書の意見書採決に抗議する 「日の丸・君が代」対策委員会
お知らせ

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「花は土地に咲く」平和サミットに参加して

ひのきみ特派員A

 7月1日、2日にサミットを間近にひかえた沖縄を訪れた。街のあちこちに警官の姿が目立ち、はやくも厳戒体制といったところ。空港へ通じる主要道路でも検問が行われていた。また古都首里の紅型工房を訪ねようとしたのだが、これが日航グランドホテルのすぐ近く。わずか50mくらいの道に警官が10人もいて、通りかかる人すべてに「どこへ行くのか」と職務質問。
 さて、今回の旅の目的は、阿波根昌鴻さんの「わびあいの里」が主催する平和サミットへの参加である。会場は昨年完成したばかりの読谷村文化センター。ここは今も米軍基地の中。ここの土地は戦後米軍が接収して補助飛行場として使ってきた。村民が返還を求めて粘り強くたたかった結果、村庁舎と同様、ついに基地内に建設することを認めさせたものだ。「花は土地に咲く−基地なき平和を求めて」と題した平和サミットの会場としてはまさにうってつけの場所である。
 1日午後1時、開場とともに多くの人がつめかけ、1000人以上の参加で会場は満員。名護市辺野古からヘリ基地建設に反対する人びとも大勢やってきて最前列に陣取っていた。まず、石原昌家沖縄国際大学教授による開会あいさつ。氏は、戦争や反基地のたたかいの体験を語り継ぎ、そこから学ぶことの大切さを語った。(なお、最近氏の著書『沖縄の旅・アブチラガマと轟の壕』(集英社新書)が出版されたが、これは沖縄修学旅行でガマを訪ねる生徒・教員の必読文献だと思う)
 次に阿波根さんのメッセージが録画の映像で流され、唄と三線の演奏へ。まず、でいご娘の「屋嘉節」と「艦砲ぬ喰ぇーぬくさー」。続いて、伊江島の土地闘争の中で歌われた「陳情口説」。当時実際に「こじき行進」を体験した平安山さんの歌は、歴史的にも貴重な演奏であり、ずっしりと胸に響いた。その一節に「親ぬゆじりぬ畑山やいかに黄金ぬ土地やしが うりん知らんさアメリカや」とある。
 シンポジウムは、筑紫哲也氏を司会に、次の5名がパネリストとして参加した。大田昌秀前沖縄県知事、平岡敬前広島市長、元ひめゆり学徒隊の宮良ルリさん、石川洋わびあいの里理事、山内徳信前読谷村長。
 平岡さんは、被爆の実態を世界に訴えても、特にアジアの人びとになかなか理解してもらえず、伝わらないもどかしさについて語り、それは日本が戦後、アジアへの加害の事実にきちんと向き合ってこなかったことが問題である、と述べた。宮良さんは、自らの戦争体験を語り、「また同じ話といわれても、命ある限り語り続けたい」と決意を述べた。大田さんは、「現実こそが大事だというが、理想とか理念を失った政治が民主的なものになるとは思えない」と述べ、日米両政府の基地問題に対する姿勢を批判した。山内さんは、民衆こそが歴史をつくる主体だと強調し、「サミットを逆手にとって沖縄から平和のこころを訴えていこう」と述べた。
 私はちょうど100年前の北清事変のことを考える。中国で帝国主義に反対する義和団の乱が起きたときに、共同で出兵しこれを鎮圧したのはイギリス・アメリカ・フランス・ドイツ・ロシア・オーストリア・イタリア・日本の8か国であった。今度の九州・沖縄サミットに参加する国は、上記の顔ぶれとほとんどかわりがない。オーストリアのかわりにカナダが参加するという違いだけだ。しかし、この100年、世界は変わっている。もはや、大国の首脳が世界を動かす時代ではないはずだ。民衆の力が強まり、国境を越えた人と人とのつながりははるかに深く、広く、強くなっている。
 平和サミットと同じ日、沖縄では「民衆」に視点を置いた催しがいくつも行われていた。「国際沖縄フォーラム−民衆の安全保障」にはアジア・太平洋地域から多くの研究者や市民運動家が参加し、二日間にわたって「民衆の安全保障」について討議、「国境やその他の境界を越えた連合が民衆の安全を保障すると信ずる」という宣言を採択した。那覇市内では、若者が中心になって、沖縄ではじめての国際映画祭「沖縄映画祭2000」を開催。インド、インドネシア、ベトナム(「ナイフ」「サイゴンからの旅人」)、中国(「乳泉村の子」)、韓国(「息づかい」「太白山脈」)、ボスニア、イスラエル、日本(「北京」「太陽の子てだのふあ」)の20作品を上映。私はこの中の半数を見たことがある。映画のラインナップからも、「20世紀の戦争の記憶を、平和の物語に紡いでいこう」という主催者のメッセージを十分感じとることができた。

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今何が大切か

大野 昭之(元東京都町田市立木曽中学校長)

 昨年夏「国旗・国歌法」が強行採決された。その行政府は何度も「これによって新たな強制をするものではない」と言明したにも拘らず、おめでたくそんな言葉を信頼する者はいなかった。案の定、文部省・教育委員会は政府言明どこ吹く風と強制を強めた。この調子でゆけば2000年3月に行われる卒業式は大変なことになる、教育界にとって関ヶ原になる。国民は現場の教師の出方、卒業式を注視した。
 全国の教師や国民が「三月決戦」を期待したにも拘らず、教師のナショナルセンター日教組と全教何れもが、「救援する金がない」ことを理由に、処分のでない闘争、そんなものが闘争であるわけがないが、一切の闘争を放棄した。
 全国司令部が逃げの姿勢であれば、各県や各支部が算を乱して逃げまどうのは当然だった。
 日教組・全教何れもが、闘いの最大の環である「日の丸・君が代」を闘わずして、「教え子を再び戦場に送るな」という時代遅れのスローガンを掲げ、内心の恥を押し隠している。「日の丸・君が代」の徹底は、教え子を戦場に送るためのものでしかない。かつて日教組が闘いの鉾をおさめ、日教済という保険屋に移行しつつあった時「日教組死して、日教済残る」という落首が流行ったが、今金融恐慌の中で、その日教済も危うくなっている。 現場の教師は、日教組・全教に対する一切の幻想を払拭し、自ら闘う道をさぐるべき時であろう。西の広島・東の国立という言葉で、最後まで頑張っている者が、国家権力と右翼によって袋だたきにあっている。それを救う道は全国の教師が自らの居る場所で闘う以外にない。処分のない闘いなどはない。闘いが強ければ、処分が軽くなる。救援の金は、処分にみあって集めればよい。今全国では多くの教員が、組合から見捨てられながら、新しいネットワークを作りながら闘っている。組合員の名に安住し、闘いをやめているのは、正に犯罪的である。
 前号で八王子の石川中学の校長は「法律で決まっているからやります」と言っているが、学校の行事に、どんな装飾をし、どんな歌を唱うことが、学校の意志(校長のではない)によって決められない理由がない筈はない。
 戦前の国民学校令16条「学校長ハ地方長官ノ命ヲ承ケ校務ヲ掌理シ所属職員ヲ監督ス。」17条「訓導ハ学校長ノ命ヲ承ケ児童ノ教育ヲ掌ル。」の「地方長官ノ命ヲ承ケ」「学校長ノ命ヲ承ケ」が削られ学校教育法第28条となった革命的変化を知らぬ教師はいないだろう。
 それを知らぬふりをして「国旗・国歌法」や文部省令である「学習指導要領」によって「法律によって決まっているからやる」と言う校長のバカ頭を変えさせるためには、単なる理論的説得(それも大切だが)だけでなく一歩も引かない教師の団結による闘い、処分されても闘うという固い決意こそ今最も大切なものである。反「日の丸・君が代」の闘いこそ、新たな戦闘的組合の構築につながるのだ。

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戦後の「日の丸」との出会い

梅 靖三

 15年ばかり前、当時大学生で「西武ファン」だった娘に誘われて、妻も一緒に西武球場へナイターを観に行きました。弁当を買って試合が始まるのを待っていたら、「日の丸を掲揚します。皆さんご起立をお願いします」との場内アナウンスがあり、観客が一斉に立ち上がったのには驚きました。戦後プロ野球が復活して間もないころ、券をもらって後楽園に巨人戦の試合を観に行ったことがありますが、その時は「日の丸」はありませんでした。
 アナウンスを無視して人垣の中に埋もれて私たち三人が坐ったまま弁当を食べていると、周囲から「日本人なのになぜ立たないのか」などという声が聴こえてきました。そんな非難の声に耳をかさず弁当を食べ終えたのですが、万人の中でわれわれ家族だけが坐って弁当を拡げているのにはやはり勇気がいりました。
 戦後、ドイツとイタリアは国旗と国歌を変え、ドイツでは「世界に冠たるドイツ」の歌詞は歌いません。一方、日本では侵略のシンボルの「日の丸」が平和の祭典・オリンピックや国際競技大会で掲げられ、オリンピックで優勝すると「君が代」の曲が流されて、日本国中が「萬歳、萬歳」で湧きます。

国民の間に定着していない「日の丸」「君が代」

 自自公政府は非情にも、広島県世羅高校校長の自殺を好機とばかりに突如「国旗国歌法案」を国会に上程し、審議らしい審議もせず民主党を割って成立。これに力を得た文部省と教育委員会は、卒業式・入学式における国旗掲揚・国歌斉唱の圧力を一層強め、ほとんどの都道府県公立学校で、国旗は100%、国歌も90%を超えているのが現状です。それなのに祝日に「日の丸」を出している家は普通預金の利息並みで、校長をはじめ家に「日の丸」がないのが普通というのが現実というのをみると、「日の丸」は政府の言うように国民の間に定着しているとは思えず、「君が代」に至っては「国民主権に反する」と反対が強い。

市民による新しい国民歌と国旗の制定を

 南北首脳会談が金大中政権の“太陽政策”の成果で互いに親交と信頼を深め、和解、民族の悲願である統一へ向かって大きな一歩を踏み出しました。早晩在韓米軍も撤退するでしょうし、ガイドライン法は勿論、安保条約自体の見直しが迫られるのは必至です。
 戦争に明け暮れた20世紀が終わり、21世紀にはアジアに平和な友好的共生社会が築かれる明るい展望が見えてきた今日、アジア侵略のシンボルであり、天皇制国家の永続を謳う「日の丸」「君が代」の法制化は、時勢への逆行以外のなにものでもありません。戦争責任への自覚と反省に立ち、憲法9条を世界に広めて平和な21世紀を目指す国民歌と、美しい日本の国土を象徴する国旗を公募する市民運動を起こそうではありませんか。

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ひのきみと自然の終焉

桜沢 敏夫(船橋東郵便局職員)

 島田荘司氏は、『世紀末日本紀行』の中で「縦横高さ十メートルと少しの立方体の中で二万匹もの銀ザケ、タイ、アユ、マスなどの魚を育てるというのは、我々に毎朝の通勤電車の中で暮らせというようなものだ。そこでは多くの魚が死ぬので、最初からより多くの魚を入れ、薬漬けにしておく。」と述べているが、その魚が我々であるということに気づいている人は少ないようです。この蜜飼いで体をこすり合わす結果にじみ出てくる血、そして死刑制度や侵略戦争の犠牲者の血、それらが日の丸の中の赤丸であり、この血の池を制度化するための冷酷な法律が周りの白い囲いのように私には見えます。
 また、君が代にしてもその歌詞には幾億もの同胞のさざれ石の如き悲運を予言し、寂寞凄愴の感を起こすものがあり、旋律にも雅楽壱越調の暗い呪いがこもっています。
 ところで、一人の人間を一年間養うには、鱒を三百匹、三百匹の鱒はカエルを九万匹、九万匹のカエルはバッタを二千七百万匹必要とし、二千七百万匹のバッタは草を千トンも食べるらしい。数十憶年もの歳月の結晶である地球表面は、緑の激減により今や死の瀬戸際、一人で千トンもの草を必要とする人間の存在そのものが、悪性の癌で、人間の労働に至っては、それはもう癌の転移以外の何物でもないらしい。
 魚の蜜飼いと薬漬け、人間の激増と労働漬け・・・縦横無尽に環境を消費し、破壊してきた地球丸という船体には、今や防ぎようが無い程の大きさの穴が開いていて、あと二十年か三十年ぐらいしか持たないらしいが、この大穴開けの主犯が米国で、従犯が日本であることに疑義はない。
 かくして日の丸を疑視していると、そこには近々自滅の相がくっきりと浮かびあがってくるのだが、その相は君が代の歌詞が予言するものに、そしてあの暗い旋律が暗示するものに恐ろしく酷似してはいないだろうか。いつまでも、いつまでも重苦しく残る太鼓の連打を伴うあの呪いの旋律に・・・。

以上

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「われら新国民」マークの提案

stylo rouge

 前号で、「われら非国民」マークが試作品として提案された。
 そこで、私は修正案として、「われら新国民」マークを提案したい。
 私としては、「日の丸・君が代」を今時強制してくる勢力こそ、「日本国憲法」下の国民としておかしいのであり、むしろ、血塗られた「日の丸・君が代」を大胆に否定し、新しい時代を切り開く者たちこそが新憲法下の国民に相応しいと考えるからである。これも試作品である。いかがか。

「われら新国民」

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『ひのきみ通信』50号記念特集




「ひのきみ通信」50号おめでとう

中村 美彦(市原緑高校分会)

 なんてとても委員とは思えないような書き出しではじめてしまった。ぼくはケッコー初期からの委員で、まあそんなに熱心でもないけれど、細々と続けてきた。いったんかかわると、どっぷりはまってしまうタイプのぼくとしては、メンバーではあるが中心ではないという関係の仕方はきわめてめずらしい。どういうことなのかと考えて思い当たった(おおげさか)ことが二つある。一つは会議が重なるということ。地域の会合と重なることが多い。で、どちらを選ぶかというとき、地区労の会議や支部委員会を選ばざるを得ない。それは、どっちが大事かという選択ではない。まさに「選ばざるを得ない」かかわり方だからだ。違う言い方をすれば、小幡、高木、渡部(五十音順、為念)がいるんだから安心、ということです。これが二つ目。あれっ、二つではないか? まあイイや、そんなわけで冒頭の表現になる。
 なんかヘンな文章になったついでにもっと本筋でない話を続けよう。「日の君」対策委員会の良さはみんな違うところだ。前にあげた三人もそれぞれに違う。他のメンバーもそうだと思う。それが「日の丸・君が代」反対(「強制反対」なんていうものではない)については全く一致していて、その一致点をどう運動につなげていくかということに、きわめて誠実であろうとしている。そこが非常によいところだ(自分でほめてどうする)。もちろん、会議のあとの酒もたのしくて、ぼくが細々とつながっているのは、そのせいかもしれない。
 こんなことばっかり書いていてもしようがないので、少し思うことを書いてみる。前々からもやもやしていたことがあって、森喜朗の「神の国」発言をめぐる報道でちょっと分かったことがある。一連の失言は全く失言でなく、彼の思想は「国民主権」を真っ向から否定するものだ、ということはいろんな人が書いている(だろう)からいい。ここでぼくが言いたいのは、そういう種類の話ではない。「国民主権」、「民主主義」という言葉が引っかかる。こう書くとびっくりするかもしれないけれど、素朴な話です。「民」て何?ってこと。神があって民がある。王があって民がある。people とか democracy という言葉は平板な気がするけれど(本当かどうかは分からないが)、民には対立物があってというよりそれに規定されている感じを受けてしまう。しかし他にかわる言葉がないから、仕方なく使っている。「金持ち」はなかなかなくならないだろうけれど、「王様」はそのうちになくなるとは思うから、このもやもやも、それまでのことなのかもしれないけどね。

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『ひのきみ通信』発行50号に寄せて

小幡 勉(京葉工業高校分会)

はじめに

 早いもので、もう50号。この間の「日の丸・君が代」闘争については、「ひのきみ通信」で書かれている。これが歴史そのものだ。今やインターネットで世間に認知されている。高教組運動を引っ張ってきた感がある。そこで50号に寄せて、今後の展望をメモしてみることにした。本来はもっと長いものだが。字数の関係である。

「日の丸・君が代」をもっと授業で教え、その「成果」を交流しよう!

 私は以前市立松戸高校の実践を『歴史地理教育』誌に「『日の丸・君が代』を通してどのような学力をつけるか」としてレポートした。これが今や当然のことになってきた。しかしこの実践の交流が、私を含めてまだまだ少ない。「日の丸・君が代」を学んだ後にどのような認識に到達したか。この交流を是非とも活発にしたいものだ。

「国旗・国歌」問題を通して国家論の議論を巻き起こそう!

 「国旗・国歌法」問題や「神の国」「国体」発言などを通して、日本の国家像が議論されるようになってきた。「象徴としての天皇」の政治的利用を阻止するためには、当面国民主権の原則を適用させ、内閣の助言と承認による国事行為のみに限定させていくことが重要である。首相や衆参議長や大蔵大臣がかかわっている皇室典範や皇室経済法などを厳密に適用していくことだ。しかしこれは選挙によってしか変わらないだろう。選挙でどんな勢力が国会に多数を占めるか。それは一重に国民の肩にかかっている。こうした営みのなかで、民主共和制の国家像が射程に入ってくるのだと思う。

「心の問題」を重視して!子どもの内心の自由を奪う教育の打破を!

 17歳問題やいじめ、オウム、子どもの現状を克服していく方策とし、文部省は「心の問題」を打ち出している。「神の国」発言や畏敬の念の問題を含めて、宗教の問題を重視していくことを呼びかけたい。教育基本法は「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない」「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」としている。子どもの権利条約やいくつかの国際条約等においても、宗教と人権の問題を重視している。子どもの「心」に宗教的自由を自覚させることは、平和や人権、民主主義にとって重要な課題である。したがって宗教教育の実践のプログラムと交流を旺盛に展開していく組織的保障を確立することを呼びかけたい。これは無神論者を含めて考えることのできる課題である。

「日の丸・君が代」の強制に反対する全教職員投票の実施を!

 憲法改悪が日程に上ってきた。これまでの住民投票やヒロシマ・ナガサキからのアピール署名運動を踏まえ、国民主権を国民のものにするための運動を教職員の中に提起したい。強制反対の一点で団結した「日の丸・君が代」強制反対集会のように、それぞれの政治的立場を越えて、広範な教職員、国民とどこの目線で一致し、過半数を獲得していくか。そのためにも教職員の中に1票投票の経験を蓄積していくことが重要である。そのなかでこそ憲法改悪の動きを打ち破り、憲法を世界に、文字通り国民生活に根付かせることができる。一人一人の教職員は職場の主人公なのだ。

おわりに

 この間、運動し、実践し、感じてきたことをまとめてみた。21世紀初頭には「紛争を平和的手段=話し合いで解決する」とした日本国憲法改悪の是非が日程にのぼってくる。世界の平和と民主主義勢力の到達点である憲法を花開かせるためには何が必要か、その観点と方法論を簡単にまとめてみた。ご検討をお願いしたい。

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フェミニズムの視点から?

佐久間 美弥子(千葉工業高校分会)

 4〜5年程前、「教科書からの『従軍慰安婦』の記述削除」を求める意見書運動が、全国的に展開されたことがあった。千葉県議会でも自民党から提出され、強行採決された。しかし、私たちはこの時、積極的に反対運動に取り組み、千葉市議会に同趣旨の意見書が提出された時には、これを撤回させることができたし、全国的にもこの運動自体は不成功に終わったといえる。しかし教科書記述については、昨年の8月、教科書会社2社が「自主的」に「慰安婦」記述を後退した内容に変更したし、現在検討中の教科書でも、各出版社が、かなり自主規制しているという情報が伝えられている。
 私は、元「従軍慰安婦」の方々の話を聞くと、悲しみともつかず、怒りともつかない、体中が震えるような、圧倒的な感情にとらわれる。それは、同じ女としての共感に基づく感情なのだろうか。日本の女たちも「日の丸・君が代」の下で人権を抑圧され、天皇の為に戦う兵士を育てるよう強要されて生きてきた。しかしその一方で、私は、人として、そして女として生きる権利を暴力的に蹂躙した日本軍による犯罪行為を、日本の女たちが「銃後」で支えた側面も忘れてはならないと思っている。
 「フェミニズムはナショナリズムを超える」か。北京女性会議での上野千鶴子さんのこの発言が大きな議論になったことを聞いたことがあった。戦中、戦前の日本において、フェミニストと呼ばれる女性たちが積極的に戦争に協力した事実もまた思い出す。男女共同参画社会は理想だけれど、しかし男女が協同して、「日の丸」を背後に世界に羽ばたく若者たちを育てる社会にはしたくないと思っている。
 今、千葉県議会では、「日本国への愛情と誇りを持つことのできる歴史教科書作成に向けて適切な対応を求める意見書」が、自民党から提案されている。皇国史観に基づく中学校歴史教科書が検定にかけられており、この教科書を採択させる圧力をかけようとの動きと一体だと思われる。「日の丸・君が代」の国旗・国歌化、森首相の「神の国」発言、憲法改悪、教育基本法改悪の動き、等々。「戦争のできる国家」づくりへの方向性と狙いが一層明確になりつつある。
 私は、ささやかながらも一人の女性として、そして日本に住む一人の人間として、世界に生まれた一人の人間として、この間、千葉県内に着実に広がりつつある連帯の輪の一端を担って平和で民主的な社会の創造を求めてこれからも取り組みたいと思う。

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千葉県議会での歴史教科書の意見書採決に抗議する

「日の丸・君が代」対策委員会

 7月6日、県議会の文教委員会が開かれ、自民党が、政府に対して歴史教科書の「適正な対応」を求める意見書を提出した。しかし、全員一致の賛成は得られず、本会議への提出は見送られた。にもかかわらず、自民党は独自に、11日の本会議にこの意見書を提出した。それは次のようなものである。

日本国への愛情と誇りを持つことのできる歴史教科書作成に向けて適切な対応を求める意見書

 国家の基本は人であり、教育こそが国家百年の計である。教育は、新しい世紀の到来を前にして取り組むべき最重要課題である。
 現在の教育現場は、学級崩壊・不登校・校内暴力と問題が山積している。これらのことと、自国の歴史に誇りがもてないような記述に満ちている歴史教科書の存在が無関係だとは思えない。
 よって、本議会は、政府に対し、児童・生徒が自国の歴史・伝統・文化に誇りを持ち、日本国への愛情をより一層強めるような歴史教科書を作るための適切な対応を求める。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 当日、千葉高教組は、県議会傍聴の動員をかけた。10数名の組合員が傍聴にかけつけた。
 本会議では、共産党の小松実議員が、「条文は抽象的で、具体的な事例・論証がない。論理の飛躍、こじつけであり、意見書の名に値しないものである」と前置きし、次のような質問をした。

  1. 学級崩壊・不登校・校内暴力と歴史教科書はどう関係しているのか。
  2. 自国の歴史に誇りがもてないような記述とは具体的にどこか。
  3. 日本国への愛情を持てる教科書とはどのようなものか。
  4. 適切な対応とはどういうことか。教育基本法にある「不当な支配に服することなく」に対する挑戦ではないか。

 そして、「子供たちには歴史の真実をこそ教えるべきだ」と結んだ。
 それに対し、自民党の斎藤万祐議員は、次のように述べた。

  1. 「無関係だとは思えない」と言っている。教科書に残虐な場面がある。
  2. 「明治維新」の記述や「南京事件」の記述など、共感が得られない。
  3. 日本はアメリカなどよりも長い歴史を持っている。そうしたところに誇りを持つような教科書だ。
  4. 日本は海外援助をしてきたことなども記載するように。

 これに対し、小松議員は「『無関係だとは思えない』などと言うのは無責任である。学級崩壊などに関する文部省や総務庁の調査結果でも、どこにも教科書のことなど出てこない。教科書は学問的成果の上に、子供の発達に応じて、書かれるものだ。意見書そのものが成り立たない」と述べた。
 他に、社民・県民連合の村上克子議員、共産党の丸山慎一議員らが質問や意見を述べた。しかし、村上議員の質問に対しては、斎藤議員は「先程の答弁と変わらない」「意見の相違」などと述べ、まともに答えようともせず、「40年前に教育実習をされたというが、お着く見えた」などという始末。さすがに、傍聴席から「まじめにやれ!!」という野次が飛んだ。
 最後に、社民・県民連合の小宮清子議員が次のような意見を述べた。
 「学級崩壊などはいまの社会の反映である。答弁でも教科書との関連は認められない。『こじつけ』と言わざるを得ない。また、誇りがもてないような記述に満ちているということに関しても、回答がなかった。現在の教科書は検定を通ったものが使われているが、それを否定している。歴史教育では何が大切か。歴史の真実を隠すことでは、誇りも真の未来もない。歴史をねじ曲げることによって誇りある未来を築くことはできない。」
 採決の結果、定数98議席中、自民党(65議席)・自民クラフ(1議席)・水と緑の会(1議席)の賛成多数で可決した。
 その後、傍聴行動に参加した組合員で話し合いを持ったところ、「レベルの低い討論だった」「県議会に不信を持たせるないようだった」「自民党は腐っている。教育『荒廃』の根拠がここにあると思った」「数の力で意見書を通させ、文部省に自由主義史観の教科書検定を通させるところに狙いがある」「滅びゆく勢力のあがきにも似た目茶苦茶さが目立った」などの感想が出された。高教組はさっそく『抗議声明』を出すことにした。
 我々も、このようにでたらめな「意見書」採択に、声を大にして抗議する。

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お知らせ

7月16日(日) 10:00
〜18:00
平和のための戦争展 市川市民談話室3F
 (京成八幡,JR本八幡)
7月16日(日) 10:30〜 ピースサイクル2000進発式 千葉市民会館
7月16日(日) 14:00〜 「日の丸・君が代」と「教育改革」のねらい
 ─卒・入学式の総括と今後の展望を語る7・16県民集会─
 今年3月、4月の県内高校の報告&講演:渡辺治
千葉県教育会館303
7月16日(日) 14:00〜 ビデオ上映会「教えられなかった戦争・沖縄編」 千葉市女性センター
 (京成千原線千葉寺5分)
7月16日(日) 18:30〜 やめて!東京都による「防災」に名を借りた9・3自衛隊演習 中野区環境リサイクルプラザ
 (中野15分:中野5丁目)
7月17日(月) 14:30〜
19:00〜
MABUI上映会 北区・赤羽会館
7月18日(火) 10:30〜 ピースサイクルちば2000
 市川市役所→干葉市役所14:00→県庁15:00
 
7月18日(火) 11:00〜 即位礼・大嘗祭違憲神奈川住民訴訟 東京高裁822
7月18日(火) 13:30〜 文京七中早川さん分限免職裁判 東京地裁619
7月18日(火) 18:30〜 南京虐殺事件の真実をろんなのものに─東京集会(仮称)
 実行委員会学習会
法政大学大学院304教室
 (市ヶ谷5分)
7月19日(水) 10:00〜 ピースサイクルちば2000
 放医研→佐倉市13:00→成田市17:00
 
7月20日(木) 9:30〜 ピースサイクルちば2000
 飯岡駅12:00→飯岡町トチーカ群見学13:40
 
7月20日(木)
〜8月6日(日)
10:00
〜18:00
水俣東京展 東京都写真美術館
7月20日(木) 10:30〜
13:30〜
MABUI上映会 奈良県大和高田市
 地場産業センター
7月20日(木) 13:00〜 「海の日」・沖縄サミット・宮中晩餐会に反対する集会 文京区民センター1A会議室
 (地下鉄春日2分)
7月20日(木) 14:00〜 嘉手納基地包囲行動  
7月20日(木) 17:00〜 ニライカナイ祭りTOKYO 日比谷野外音楽堂
7月21日(金)
 〜30日(日)
  九州・沖縄サミット 名護市
7月21日(金) 8:00〜 ピースサイクルちば2000
 銚子→東海村旧動燃16:00→村役場16:30
 
7月21日(金) 12:00〜
18:00〜
沖縄サミット反対集会・デモ(サミット反対実)
国際集会
名護市
7月21日(金) 18:00〜 ダンボール桟敷ほろ酔いコンサート 風楽(酒々井町)
7月22日(土) 13:00〜 ちゃんと、話そう「日の丸・君が代」−国立では− 狭山市中央公民館
 (西武線狭山市5分)
7月22日(土) 10:30〜
15:00〜
沖縄サミット反対集会・デモ(サミット反対実)
沖縄県各地で反基地行動(キャンプシュワブ、普天間基地など)
名護市
沖縄県各地
7月22日(土) 15:00〜 GAMA・MABUI上映会
 15:00〜GAMA 17:00〜MABUI
世田谷区・玉川区民会館
7月22日(土) 18:30〜 人骨発見11周年集会
 21世紀への伝言・名もなき骨はなにを語るか?
新宿区消費者センター
 (高田馬場5分)
7月22日(土) 18:30〜 沖縄サミット反対デモ(サミット反対実) 沖縄県庁前〜首里城
7月23日(日) 11:00〜 サミット共同声明発表時行動(サミット反対実) 名護市
7月27日(木)
 〜31日(月)
10:30
〜18:00
2000平和のための埼玉の戦争展
 (最終日は15:30まで)
浦和西口コルソ7Fホール
7月28日(金)
 〜31日(月)
  地理教育研究会CGU千葉館山大会 中央学院大学館山セミナー・
 ハウス(JR館山18分)
7月29日(土) 12:00〜 第46回母親大会全体会「私の会った世界の子どもたち」黒柳徹子 有明コロシアム
7月29日(土)
 〜31日(月)
13:00〜
〜12:00
全国民主主義教育研究会第31回大会 明治学院大学白金校舎
 (目黒、品川より都バス)
7月29日(土)
 〜31日(月)
14:00〜
〜11:00
第30回働く青年の全国交歓会 志賀高原一ノ瀬
7月29日(土)
 〜31日(月)
  2000子ども全国交歓会 志賀高原高天が原
 (中学生は沖縄)
7月30日(日) 12:00〜 アムネスティ総会
 記念講演会「日本におけるNGOと国際人権活動のこれから」
戸山サンライズ
 (JR新大久保バス15分)
7月31日(月)
〜8月1日(火)
9:00〜
〜17:00
第17回教育労働者全国交流会in熊本
 現代のファシズムと学校
水前寺共済会館
 (熊本市水前寺)
7月31日(月) 11:30〜 東京都「皇太子結婚祝賀事業」住民訴訟 東京地裁606
8月1日(火)
 〜3日(木)
  歴教協第52回全国大会・長崎
問合:Tel.03-3947-5701
 
8月1日(火)
 〜8日(火)
  第4回NCCフィリピン交流ツアー
 問合:Fax.03-3204-9595
 
8月2日(水)
 〜8日(火)
  21世紀へ伝える歴史の旅・ノモノハン・ハイラル・北京
 問合:Fax.03-3962-8478
 
8月5日(土)
 〜6日(日)
  自由主義史観研究会全国大会
 問合:03-5800-8515
はあといん乃木坂
 (千代田線乃木坂3分)
8月6日(日) 13:30〜 2000年平和のための証言集会−台湾植民地支配がもらしたもの 豊島区民センター(池袋5分)
8月7日(月)
 〜13日(日)
  21世紀へ伝える歴史の旅・中国東北・旧満州
 問合:Fax.03-3962-8478
 
8月8日(火)
 〜10日(木)
  全国キリスト教人権教育セミナー
 「共に生きる」きずなの創造と回復をもとめて
西南女学院中高等学校
 (JR小倉タクシー10分)
8月9日(水) 14:00〜 「国旗国歌」法成立1年、考え続けよう「日の丸・君が代」集会 くにたち市民芸術小ホール
 (南武線矢川10分)
8月11日(金) 14:00〜 台湾からの訴え−再び元「従軍慰安婦」の証言を聞く 船橋市中央公民館(船橋7分)
8月11日(金)
 〜13日(日)
  「ピースinしずおか」問合:053-422-4810  
8月12日(土) 13:00〜 靖国神社・遊就館見学会 講師:吉田裕 九段社会教育会館
 (地下鉄九段下2分)
8月12日(土)
 〜15日(火)
10:00
〜19:00
平和のための戦争展 日本青年館中ホール
8月13日(日) 13:00〜 戦争はいや!日本の近現代史を新宿の戦争遺跡から学ぶ
 (フィールドワーク)
日本青年館中ホール
 ロビー集合
8月13日(日)
 〜18日(金)
  第10次『心に刻む会』ソウル追悼集会訪韓団
 企画:『心に刻む会』訪韓団事務局 Tel.090-8798-8290
 
8月13日(日)
 〜19日(土)
  神戸・南京をむすぶ・南京&ハルピン
 問合:Fax.078-851-2760
 
8月14日(月)
 〜25日(金)
  第30回マレー半島南部戦争追体験の旅 企画・運営:高嶋伸欣
 申込:Tel.03-3341-2411 Fax.03-3341-3101
 
8月24日(木)
 〜25日(金)
  第28回平和教育研究全国シンポジウム 立正大学講堂・三号館
 (五反田・大崎7分)
8月26日(土) 13:00〜 20世紀最大の嘘「南京大虐殺」を徹底検証する埼玉県民集会
 東中野修道,藤岡信勝 自由主義史観研究会Tel.03-5800-8515
埼玉会館小ホール
 (JR浦和7分)
9月15日(金)
 〜21日(木)
  撫順戦犯管理所開設50周年記念・友好訪問団(北京・撫順・瀋陽)
 申込・問合:中国帰還者連絡会 Fax.03-3543-9934
 
9月23日(土)
 〜24日(日)
  全国平和教育研究シンポジウム「21世紀に生きる希望と確信を」
 講師:中西新太郎・竹内常一・佐貫浩
法政大学62年館(市谷8分)

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